2013年発表。コンパイラーはToni Simonen。2CD仕様。Toni Simonenの選曲のクセだろうか? ビッグネームが多く、ポップな曲が多い印象。しかしながら、楽曲の個性が豊かでありながら統一感を感じないのに、結果的にアルバムとしての完成度は高い。どんな方向性へ転換しても、それまでのファンからの反応は様々だろうが、この内容は決して薄くはない。
*このページは広告を含みます/このサイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。
CD1
1.Blank & Jones feat.Cathy Battistessa – Miracle Man [Beached]
ドイツ出身、Jan Pieter BlankとRené Patrick Runge、Andy Kaufhold。ボーカルは歌姫Cathy Battistessa。
贅沢なオープニングを飾る。エメラルドブルーの透明感をもつ、極上のビーチサイドソング。Café del Marとしての、そしてBlank & Jonesとしてお互いのアイデンティティをしっかりと体現している。
2.Steely M – Summer Breeze
ドイツ出身、Martin Stehl。ポップ、ハウス、エレクトロニカをスタイルとする。10代の頃からドラマー、ピアニスト、ビブラフォン奏者として活動していた。
穏やかな波間を思わせるシンセとパーカッションが、リゾートでのひと時を思わせる。どこまでも繰り返される反復のリズムがもたらすトリップが、真夏のドリンクのように渇いた体の隅々まで行き渡る。
3.Gelka feat. Phoenix Pearle – Being You
ハンガリー出身、Csaba KürtiとDömötör Sándor。ボーカルはイギリス出身、 Phoenix Pearle(Sara Garvey)。
真っ青な海と空へ突き抜ける、ポップでトロピカルなチルアウトソング。耳あたりの良い曲調が、自然に笑顔を作り、軽やかに体を動かせる。
4.Afterlife – Suddenly
イギリス出身、Steven Gordon Miller。
ボサを感じさせるドラムやパーカッションの展開が、ややいつもと違う趣向を思わせる。艶やかなボーカルに、インパクトの強いリズムが涼しげなムードの中にほのかな情熱を作り出している。
5.Moya – Lost and Found (No Logo Remix)
イギリス出身、Emily Poppy Andrews。リミックスはPete GoodingとSteve Miller。
陽気なボサを感じさせる表向きな面と、ブレイク時にはとても涼やかなムードを醸している。リミックスによりしっかりと曲として楽しませ、落とし過ぎない雰囲気で心も体も持ち上げてくれる。
6.The Ramona Flowers – So Many Colours
イギリス出身、Dave Betts(Key)、Edward Gallimore(Dr)、Sam James(G)、Steve Bird(Vo)、Wayne Jones(Bass)からなる5人組バンド。DaveとWayne、Samが同じ大学で出会い、のちにEdとSteveが加入した。ちなみにギターのSam Jamesはダイソン掃除機の創業者の息子だという。バンド名は漫画原作の映画に出てくるヒロインから。
ポップシーンからの登場。並びにあっては珍しく曲調もポップスらしいキャッチーさを感じるが、開幕のギターサウンドからは潮の香りも漂う。バンドらしい曲調や音の構成を感じられる一曲。
7.Ashley Height – Painkillers
Ashley Height。ダウンテンポやサイケデリックをスタイルとする。
ギターの音の流れが心地よく、まるで潮風に乗って届けられる爽やかさを纏っている。窓際の白いカーテンが風にふんわりと揺らされ、それを眺めながら、穏やかで心休まるひとときに微睡む。
8.Ben Onono – Small World
イギリスとナイジェリアの血を引く、Benjamin Onono Arinze。シリーズ8、18にクレジット。過去にはアイヴァー・ノヴェロ賞にもノミネートされた作曲家。ロンドン王立音楽アカデミーの奨学生としてピアニストとして訓練を受けた。
エスニックな雰囲気を湛え、独特な歌声とビートがマッチしている。ダウンビートな曲は控えめながら、ポップな歌声と一体となり有機的な働きで心身へと浸透していくよう。
9.Bonobo feat. Grey Reverend – First Fires
イギリス出身、Simon Green。オルタナティブロック、ジャズ、ワールドミュージックをスタイルとし、ライブでは楽器を取り入れたフルバンドで披露する。Grey Reverendはアメリカ出身のギタリスト、LD Brownのソロプロジェクト。サックスは9歳で始めたものの、メインとなるギターに出会ったのは22歳だという。
Grey Reverendの少し静かで沈んだ歌声が抒情を感じさせ、メロディアスながら歪みを持ったシンセが、ボーカルに強い引力を与えているようにも思える。不思議な魅力に惹かれ、水面に移された空へと吸い込まれるかのような錯覚を覚える。
10.Kate Bush – Running Up That Hill (A Deal With God 2012 Remix)
イギリス出身、Catherine Bush。歌手、ソングライター、ダンサーでもある。11歳で曲を書き始め、19歳でデビューし、初めて自分で曲を書いてシングルチャートトップになった女性となった。本曲は12年のロンドン五輪の閉会式で使用され、原曲は1985年発表の『Running Up That Hill (A Deal With God)』だが、こののち、2022年にNetflixを皮切りに再ブレイクを果たすことになる。
正直、こういう曲をぶっ込んでくるのは、ありがたい。総じての流れは壊れるかもしれないが、意外性のある曲がないと没個性に陥ってしまうからだ。力強いドラムビート、ロシアの弦楽器バラライカを使い、情熱的で懇願的と言わしめた。時を超えてもなお力を宿す往年の名曲。
11.The xx – Sunset
イギリス出身、Romy Madley CroftとOliver Smith、Jamie xx(James Thomas Smith)からなるインディーロックバンド。
重厚なドラムに、色気をたっぷりと染み込ませたギターメロディとボーカル。ややポップ寄りながら、その静謐な情感に漂わせるスモーキーな性感が、ロマンティックさすら感じさせる。
12.Steve Miller & Rachel Lloyd – Salt Water Waves
イギリス出身のSteven Gordon Millerと、ウェールズ出身、MooiのメンバーであるRachel Lloydによるプロジェクト。
ゆるりとしたイントロから、Rachel Lloydの透明感溢れるボーカル。サウンドエフェクトのような構成の曲調。王道のポップチルでありながら、わかりやすいサビがないなど、どこか実験的でもある。
13.Moby & Mark Lanegan – The Lonely Night [Moby January 14 Remix]
アメリカ出身、Richard Melville Hallと、同じくアメリカ出身のMark William Lanegan(’22年2/22没)。
クラシックを思わせるピアノの重低音が暗闇に響き、老人のようなMark Laneganのダークなボイスが、内省的な雰囲気を醸し深い陰影を映し出している。孤独感を助長する歌声だが、決して悲しい孤独には感じられない。独り言のような、呪文のような歌詞がリフレインされ、誰かに訴えたいのか自身に言い聞かせているのか。Mobyは彼を「過去25年間で最も優れ最も特徴的な声だ」を評していた。
CD2
1.D*Note – Sylvia
イギリス出身、Matt Winn (Matt Wienevski)とMatt Cooper。
清浄な光を感じさせる、夜明けのような曲。『D*Votion』などにあったバレアリックハウスさは鳴りを潜め、ジャジーでスモーキーな曲調が、森や砂浜といった自然を意識させるサウンドデザインを描いている。
2.Space Designers – Nothing Really Matters
???(情報取れず)
穏やかな時間を感じさせる、爽やかなアンビエント。どこかの庭園の雰囲気のような清廉さや、秘密の花園のような可愛らしさすら覚えさせる。
3.Ziller – Pearl & Dean
イギリス出身のSteven Gordon Millerのプロジェクト。
パーカッションをリードに、微かなサックスやフルートがエスニック感を掻き立てる曲調。Steve Millerらしいバレアリックなハウスとアンビエントがしっかりと融合し、海を感じさせるだけでなく、鬱蒼とした森や自然の風景を思わせる。
4.James Bright – Be
イギリス出身、James Bright。バレアリック、ニューディスコ、ディープハウスがスタイル。AfterlifeのSteve Millerとのプロジェクト、Luxとしても活躍している。
ドラマ性を秘めた一曲。映画的というほどではないが、その曲の起伏の中にロマンチックさや緊迫感を感じる。気だるい暑さを感じる午後でも、冷ややかな音のシャワーで気持ちを清められそうだ。
5.Silent Way – Pretty Good
ハンガリー出身、Gábor Czvikovszky、Péter Glaser、Gyenge Lajos、Mihály Farkas。
根底にあるジャズムードが、どこかエロティックさを漂わせる、プログレッシブアンビエント。自然の中よりも、ライトアップされたジャグジーやナイトプールを思わせる。
6.Lux – Golden
イギリス出身のSteven Gordon MillerとJames Bright。
どこか不思議な、音の迷路に入り込んだような感覚。スロービートで、少しの不穏さがスパイスとなっている。およそゴールデンを感じさせない曲調だが、見つけにくい中にこそ存在する価値のあるものを表現しているようにも聴こえる。
7.No Logo – Matter of Time
イギリス出身、Pete GoodingとSteve Miller。
バレアリック漂うダウンビートに、男性の緩やかなポップボーカル。気を抜くと耳から滑り抜けていくように、強い印象をもたらすことのない間口の広い曲だが、繰り返し聴くほどにその深みを感じさせる。
8.Kinobe – Lotus Eater
イギリス出身、Julius WatersとDave Pembertonによるプロジェクト。
多幸感漂う明るく優しい曲調。海辺のホテルで迎える朝方のような鮮やかさ。タイトルには現実逃避し、安逸を貪る人という意味があるようで、ともすればこの曲は皮肉であり、快楽的であるほど浮かれている様を映し出されているのかもしれない。
9.Aromabar – Renegade
オーストリア出身、Roland Hackl、Karin Steger、Andreas Kinzl。
ダウンビートでノイジーなアンビエント処理がなければ、普通にトランスの曲。しかしアルバムの中においてはしっかりとアクセントとしての役割を果たしている。チルアウトの裾野が広いとはいえ、聴きようによっては際どく、ギリギリセーフかアウトか・・・。
10.Hazy J – Our Way
???(情報取れず)
島のどこか奥深く、ぽっかりと空いた洞窟に滴る水の音が反響しているよう。風が入り込み、洞窟や川を辿って、外へと吹き抜ける。吹く風に微かに混じるコーラスを思わせ、静謐で神秘的な空気感を纏っている。
11.Chris Coco & Sacha Puttnam – Human
イギリス出身、Christopher MellorとSacha Puttnam。Sacha Puttnamの父親は映画プロデューサー、大学学長、終身貴族、コロンビア映画会長兼最高経営責任者などを務め上げていた。
映画音楽などを手掛けるSachaとバレアリックさをしっかりと演出するChris Cocoらしい、クラシカルでシネマティックなムードを持つ曲。島を囲む海、史跡、街の中を、ドローンを用いて余すことなく映像化したような音楽的描写を感じられる。
12.Jacob Gurevitsch – Lovers In Paris
デンマーク出身、Jacob Gurevitsch。スパニッシュギタリストとして活躍。
ギターを主軸に置いたクラシカルな曲。ギターもハーモニカも、遠く離れた恋人を想うような悲しさ、寂しさを感じさせる。その募る想いがゆったりとしたビートに掻き立てられ、切なくも心に刻まれる。
13.Bliss – End Titles
デンマークを拠点とする、Steffen Aaskoven、Marc-George Andersonを中心に、ボーカルのAlexandra Hamnede、共同作曲者のTchandoによるプロジェクト。
壮大なエピローグが始まる。オーボエのようなフルートサウンドと、重いドラム、パーカッションの軽い音が程よく合わさり、長かった旅路の終わりを迎える。Blissの曲は美しくも破滅的で、哀愁を超えた悲しみがある。
コメント