Café del Mar Music – 2 Decades(1994-2014)

音楽/Music

2013年12月発表。’94年に始まったCafé del Marシリーズや派生作品のアルバム発表から20年を記念した、ほぼベスト盤。(アニバーサリー版ではCafé del Mar設立の1980年を基準にしている)。過去に収録された出典が様々で、また曲のバリエーションも程よい。長く活躍するIbizarre、Afterlife、Chris Cocoといった面々も活躍し、古き良き世界観を思わせる曲調が並ぶ。ただし同じアーティストが何曲か並ぶ点が、変化が乏しいと見るのか、しっかりと統一感があると思うべきか、意見が分かれそうだ。

*このページは広告を含みます/このサイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。

1.Mental Generation – Cafe del Mar(Underworld Mix)

原曲はCafé del Mar 20th Aniversarioより。

デンマーク出身、Jan Kjølhede Meedom(’17年にALSにより逝去) & Steffen Andersen(本名Steffen Aaskoven)。Steffen Andersenはデンマークを拠点とするBlissの一員。リミックスはUnderworldであるkarl HydeとRick Smith。

Underworldらしいプログレッシブテクノ調で、トリップホップを絡めたように仕立てられている。また、より実験的な音楽がおよそCafé del Marらしくないと思わせながら、初期の頃はこういう音が多かったこともまた懐かしさを覚えさせられる。

2.Afterlife – 5th & Avendia

VOLUMEN CUATRO(4)より。

イギリス出身のSteven Gordon Millerによるプロジェクト。

Afterlifeはバレアリックな雰囲気を纏う曲作りなのはもちろんだが、他のアーティストが作るバレアリックとは一味違う独特のスタイルがある。海や太陽の温かさを感じさせつつも、どこか物寂しさを感じさせる曲調。砂浜を想起するより、夜の街の散策と受け取るべきだろうか。オレンジ色の街灯に照らされた街並はまだ眠らず、あちらこちらで中年の男たちが酒盛りを交わしている。そんな光景が目に浮かぶ。

3.Salt Tank – Angels Landing (José Padilla & Sunchild Remix)

VOLUMEN CINCO(5)より。

イギリス出身、David GatesとMalcolm Stanners、そしてAndy Rose(’12年に癌により病没)によるプロジェクト。José PadillaとSunchildがリミックスし、Paco Fernándezがギターで参加している。

名曲中の名曲。José PadillaやPaco Fernándezの、スペインらしいヒッピー文化を彷彿とさせるピアノやギターの旋律が、力強くも物悲しく奏でられる。

4.Zuell – Olas De Sal

Café del Mar The best Ofより。

スペイン出身のJesús Martínez、Carlos Guinart、Estéve Puigの3人。ブレイクビーツやダウンテンポをスタイルとする。

スパニッシュギターがスモーキーに奏で、ボーカルが情熱と哀愁を織り交ぜる。その音の中には、スペインの文化や旧跡の本質を見つめることができる気がする。古き良きを理解し、それを愛せる大人にしか味わえないような一皿の音楽のよう。

5.Deep & Wide – Easy Rider

VOLUMEN SIETE(7)より。

北フランス出身でコンパイラーのBruno Lepretreと、Ibizarre名義で知られるデンマーク出身Lennart Krarupによるプロジェクト。

ややダークで、サイケデリックな旋律が支配する。一聴すると地味なようだが、イビサの持つ深い文化を匂わせ、深淵な魅力を漂わせる曲。

6.Levitation – Out Of Time

VOLUMEN CUATRO(4)より。

ドイツ・ケルン出身のIngmar Hänsch、Marcell Meyer、Christian Gilcherからなるグループ。ダウンビートやラウンジ、エレクトロニックをスタイルとする。

かなりプログレッシブ、トランス寄りでエネルギッシュな曲調。チルアウトとは静かな曲ばかり・・・が、間違いであると確信させる。ビートの高揚感が冷えた体に再び熱を注ぎ込み、目を覚まさせてくれるようなエネルギーがある。

7.Aromabar – Winter Pageant

VOLUMEN SIETE(7)より。

オーストリア・ウィーンを拠点とするRoland Hackl、Karin Steger、Andreas Kinzlの3人組。彼らの音楽は「ポップクチュール」と表現され、永続的な美しさを追求する音楽を創り出すことを目指しているという。

可愛らしい女性のややメランコリックなボーカルと、トリップホップが絡み合いながら、どこか落ちていくような印象を受けるが、その落ち方はゆったりと身を任せて沈んでいくような感覚に陥る。

8.Afterlife – Falling

Café del Mar 20th Aniversarioより。

イギリス出身のSteven Gordon Miller。ボーカルはRachel Lloyd。

煙た気でジャジーなダウンビートに、Rachel Lloydのアンニュイなボーカルがマッチして、聴く者の体から余計な力を抜いていくようにも感じる。トリップホップのリズムが、時間の流れを遅くするような錯覚さえ覚えさせる。

9.Fluff – Mums

Café del Mar 20th Aniversarioより。

デンマーク出身、Jan WintherとMarc-George Andersen。アンビエント、チルアウトをスタイルとする。

イントロはクリスタルのような透明感と光沢を感じさせ、ゆったりとしながらもドラマチックな展開は、昼下がりのビーチでのんびりと心地よい曲に浸りたくなる。

10.Afterlife – Blue Bar

VOLMEN TRES(3)より。

イギリス出身のSteven Gordon Millerによるプロジェクト。

クラシカルなピアノと重厚なドラム、女性のコーラスが織りなす印象が、寂寥感や不穏さを漂わせる。Afterlifeの曲にはいつも独特の物悲しい雰囲気があり、彼らの世界へと引き込まれるよう。

11.Bliss – Dunia

Café del Mar Ibiza Classicsより。

デンマーク出身、Steffen Aaskoven、Marc-George Andersonを中心に、ボーカルのAlexandra Hamnede、共同作曲者のTchandoによる国際的チルアウトグループ。

哀愁にかけては随一を誇るであろうBliss。ややインディーさを思わせる旋律が、スワヒリ語のタイトルである世界・地球・大地をよく表現している。未知の地への期待や、望郷の念のどちらも掻き立てる。

12.Lux – Northern Lights

VOLUMEN SIETE(7)より。

Afterlifeとしても活躍するSteve MillerとJames Brightのプロジェクト。

冷ややかさの中に、ほんのりと温かみを感じさせる優しく深いバイオリンの音色。そして重厚なビートが心地よい漂流感を与えてくれる。耳にこびりつくような曲ではないので、飽きがこない。極夜の中、輝くオーロラを眺めているよう。そこはトロムソかラップランドか・・・。

13.Afterlife – Sunrise(DJ Thunda & K20 Alistar Mix)

VOLUMEN OCHO(8)より。

イギリス出身、Steve MillerによるAfterlife。リミックスはErik Lloyd WalkoffとMarius Hansen。

太陽の眩さや暑さまでも感じさせてくれる明るい曲調。Afterlifeの持つ硬質なサウンドをリミックスにより取り払い、希望に溢れたような印象を抱かせる。爽やかな真夏のビーチを感じさせる。

14.Café Del Mar – Irish Women

Café del Mar 20th Aniversarioより。

スペイン出身、Julio Palaciosがプロデュース、Javier Borgia Garcíaがアレンジ。

荘厳なイントロ。そして特徴的なフルートの音から始まり、ジャジーな演奏が非常に感情を揺さぶる旋律を奏でる。

15.Chris Coco – Summer Sun(Café del Mar Guiter Mix)

Café del Mar Terrace Mixより。

イギリス出身、Christopher Mellor。

実に緩やかなバレアリックサウンド。典型的でありながら、基本であり真髄そのものだろう。多幸感あふれるサウンド。

16.Gelka – Rising

Café del Mar Dreams 4より。

ハンガリー出身のCsaba KürtiとSándor Dömötörのデュオ。Gelkaには「夢のような品質」という意味がある。

切なさを感じるギターをイントロに、果てしない海洋を前に立ち尽くすような孤独感と広がる希望の両方を描き出している。

17.Lenny Ibizarre – Las Brisas

VOLUMEN TRECE(13)より。

デンマーク出身のLennart Krarup。Café del MarではBruno Lepretreと組んだDeep & Wideなどで活躍。

イビサでの活動も長い実力派でありながら、シリーズの初期音源に入っていないのが不思議だったIbizarre。その音色はイビサの古き良き時代を感じさせつつも、しっかりと時代に追随した新鮮な色調を持っている。

18.E-Love – CAUSE I LOVE YOU NO MORE (Alster Lounge Chill Out Vocal Mix)

VOLUMEN TRECE(13)より。

ドイツ出身Philipp Staudinger、Lars Zimmermannのデュオ。ボーカルはMarkus Höne。ミックス担当にJan Löchel、Kristian Draude、Marius Reinländerの3名がクレジット。

波音にフルートとMarkus Höneの若々しいポップボーカル。曲調はアップテンポなバレアリックなミックスとなっており、生気溢れるボーカルの響きを残しつつその場を包み込んでいる。しかし、フルートのメロディ的にもなんか聞いたことがあるような・・・。

19.Vargo – Talking One Language

Café del Mar 25th Aniversarioより。

ドイツ出身、Ansgar Üeffinkによるプロジェクト。ボーカルは同じくドイツ出身、Stephanie Hundertmark。

ドラマティックで心地よい曲。ダウンなボーカルの合間に挟まれる、各言語の詩。カタコトの日本語がユニーク。世界中の言葉を一つにするという、異文化の共存を体現しているイビサを象徴しているのだろう。

20.Schwarz & Funk – Remando Al Viento

VOLUMEN CATORCE(14)より。

ドイツ出身、Alexander Hitzler(Bob Schwarz)とMartin Czihal(Jesse Funk)、Joe T. Aykut。

風を漕ぐというタイトルのように、緩やかでほんのり気だるい風を肌に受けているような気分になる曲。風が波を押しのけ、それがうねりとなり、海岸に切なさを吹き付けるようなギターの音色がロマンティックに響く。

21.Rue du Soleil – Troya

VOLUMEN NUEVE(9)より。

スイス・チューリヒ出身のAlfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio MontuoriとAndia Bischof-Foehrの5人によって’99年に結成された。ハウス、トリップホップからチルアウトをスタイルとする。Café del Marにて『Dreaming Of…』の曲がかかったところ、Brunoの目(耳)に留まったという。

やや仄暗くエモーショナルなサックスのメロディーが夕暮れから夜へと移り変わる瞬間を描いているよう。やがて曲の進行とともにマジックアワーの光が色を失い、黒く塗りつぶされていくようにも思わせる。

22.STEEN THØTTRUP – I Hope Yesterday Never Comes

Café del Mar 25th Aniversarioより。

デンマーク出身のSteen Thøttrup。Mads ArpとのMiroとして早くから活躍している。ボーカルはAnne K。

北欧をイメージするような海鳥の飛ぶ海を垣間見せるオープニング。そして悲哀を感じさせるチェロが響き、Anne Kの澱みのないボーカルが囁きかける。夕暮れのビーチで聴いていれば、どこからともなく吹いてくる涼しい風を全身に感じることができそうだ。

23.Bliss – Reveal

Café del Mar Terrace Mix 2より。

デンマーク出身、Steffen Aaskoven、Marc-George Andersonを中心に、ボーカルのAlexandra Hamnede、共同作曲者のTchandoによる国際的チルアウトグループ。

重厚なシンセサイザーのイントロ。静けさ漂う非常に繊細な旋律。そしてインディーやアフリカンな要素を感じさせるエスニックさを内包する。ただ落ち着くためのチルアウトではなく、Blissの音楽には精神的・哲学的な思想からのチルアウトへのアプローチを感じる。

24.Ritmo Intacto – Indigena

VOLUMEN TRECE(13)より。

オランダ出身のJeroen VerhaegとパーカッショニストのPaul Van den Broek。サックスをAlbert van Doornが担当。

サックスやパーカッション、笛の音が奏でる民族音楽的でジャジーなセッション。陽気なようでいて切なさを持ち、1日の終わりの宵が始まるような印象。辺りは暗くなるが、一向に気温が下がらない。そんな時に心身を落ち着けるために、ジョッキのビールを傾けてこの曲に酔いしれたい。

25.Zuell – Albariza

Café del Mar 25th Aniversarioより。

スペイン出身のJesús Martínez、Carlos Guinart、Estéve Puigの3人。ブレイクビーツやダウンテンポをスタイルとする。

緩やかなイントロ、どこか民族的な印象を受けるハミングや深みのあるビート。中盤からの旋律は、夜の景色を思い浮かばせる。幻想的な灯火に照らされながら、イビサの民族衣装を纏った踊り子たちが魅惑的な踊りを披露する姿が目に浮かんでくる。

26.Eric Satie – Gymnopedie

VOLUMEN DIEZ(10)より。

フランス出身のクラシック音楽家Alfred Éric Leslie Satie。

言わずと知れているだろう偉人。自身の音楽の傾向を「家具の音楽」と称して、酒場などで客の邪魔にならないようにしている演奏が、家具のように存在している音楽であるとしている。彼のこの哲学がCafé del Marの哲学と近いのだろう。

27.Gelka – Please Keep Your Ticket Till the End

Café del Mar Dreams Volume 3より。

ハンガリー出身のCsaba KürtiとSándor Dömötörのデュオ。この曲がBrunoによりCafé del Mar Dreams Volume 3に選出され、世界デビューを果たしたのだという。

バレアリックさの真髄を感じられる曲調。ギターやビートのハーモニーが開放感と幸福感を際立たせている。ビーチサイドやホテルのプールサイドでこの曲で楽しみたい。

28.Café del Mar – Rajamanta

VOLUMEN NUEVE(9)より。

シリーズ9付属のビデオだった本曲。ビートが鼓動を高らかに打ち鳴らし、スパニッシュギターの旋律が印象的に響き、哀愁と情熱の両方を刺激する。言葉にできない高揚感を味わいながら、感傷が幸せを呼ぶ。が、次の曲へのつながりが失敗してないか・・・。

29.Gelka – Os Pastores Da Noite

VOLUMEN TRECE(13)より。

ハンガリー出身のCsaba KürtiとSándor Dömötörのデュオ。Nightmares On Waxの設立レコード会社と契約し主にそちらで活躍している。Gelkaには「夢のような品質」という意味がある。また、ハンガリーでは有名な家庭用電化製品の総合修理サービスの名前らしい。

優しいギターの音色に呼応するように、陽気な声があちこちから聞こえる。曲調は真夏のビーチのような、光り輝く海を思い起こさせるが、タイトルは夜の羊飼い。希望の光を象徴しているのだろうか。もしくは、仕事を終えた後は海岸でゆっくりと贅沢な時間を楽しんでいるのかもしれない。

30.Rue du Soleil – Le Francaise

Café del Mar 25th Aniversarioより。

スイス出身のAlfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio Montuori。ボーカルはフランス出身のMathilde Turpin。

アコーディオンが奏でる旋律が、どこか懐かしさを抱かせる。Mathilde Turpinのフランス語ボーカルがシネマティックな感傷を呼び起こし、その深い情感は決して華美ではなく染み渡るように耳に入る。

31.Vargo – Precious Pt.1

Café del Mar Dreams 4より。

ドイツ出身、Ansgar Üffinkによるプロジェクト。

非常に落ち着いたムードに、どこか宇宙的なエッセンスを感じる作品。もしくは夜空に浮かぶ星を見上げているようで、かと思えば、深淵な水面に映る光を眺めているかのようにも錯覚させる。弦楽器の響きが時折、輝きを添えている。

32.Rue du Soleil – We Can Fly

Café del Mar The Legendより。

スイス出身のAlfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio Montuori。ボーカルはフランス出身のMathilde Turpin。

インディーかアジアチックなエッセンスを感じさせるフルートや、乾いた風を思わせるサウンドが、Rue du Soleilが魅せる果てしない旅路を思わせる。

33.Café del Mar- Many Rivers To Cross

VOLUMEN NUEVE(9)より。

Jimmy Cliffの同名曲をサンプリングしたもの。編曲はJavier Losada。ボーカルはPhil Trim。

緩やかなビートと伸びやかなボーカルが、バレアリックな曲調によく合い、爽やかな夏の海岸へと誘ってくれる。泳ぎ疲れたら浜辺に座り込んで聴き入るのもよし。気分を落ち着かせながらも高揚させてくれる。

34.Gelka – Hidding Place

Café del Mar 25th Aniversarioより。

ハンガリー出身、Domotor SandorとKurti Csaba。ボーカルはMonori Gabriella。ギターはDando Zoltan。

のんびりとしたスパニッシュギターとウミネコ、Monori Gabriellaのボーカルが、実にリラックスできる曲調。何もかもが穏やかに流れ、まるでイビサの隠れた入り江で、海風を感じながらひとり静かに休むような心地よさが広がる。わかりやすいバレアリックヒーリングだが、その美しさを最大限に引き出している。幕引きの曲としても、まるで夢心地のまま、終わらないバケーションを楽しんでいるかのよう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました