2014年発表。3CD仕様。コンパイラーはToni Simonen。発売自体は’14年の12月。
聴き込むほどにバラエティの豊富さを感じる内容。トリップホップやプログレッシブな曲も多くディープな印象で、実験的な曲も多く見受けられる。クラブミュージックや電子音楽の新旧が混在し、なお語り継がれる名曲を再認識させられる。
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1.The Amalgamation Of Soundz – Textures
イギリス出身、Jean-Claude ThompsonとMark Met(Mark Harbottle)によるプロジェクト。20周年記念版で初登場している。
深淵で透明感のあるダークさという、矛盾を孕んだ美しいアンビエント。シルクのような滑らかな波と頬をなぞる冷たい風を感じさせる、官能的な音のレイヤー。
2.Raze – Break 4 Love (Skunk Dub)
アメリカ出身、Vaughan Mason、Keith Thompson、Wanda Sykes、Bobby ColemanとDJ Stephon Johnsonによるプロジェクト。’86年-’92年までの活動だが、本曲はアメリカ、イギリスで特にヒットし、後世でもリミックスされ続けている。メインメンバーのVaughan Masonは’20年に69歳で自然死している。
原曲はポストディスコスタイルで、Vaughan Masonの艶やかな歌声が印象的。今回のミックスバージョンでは、ビートと申し訳程度のボーカルがほんのりと原曲の残り香を醸すだけのものとなり、全く別物の雰囲気を持つ。ざらついたムードが妖しい夜を演出する。
3.Kamasutra – Sugar Steps
イタリア出身、Alex Neri(Alessandro Neri)とMarco Baroni。Alex Neriはシリーズ3にクレジットされている。
クラシックな旋律を持つピアノをメインに、タイトルを意訳するような、甘美な踊り子を想起させ、陶酔感を掻き立てる。KamasutraやPlanetfunk名義ではハウス調な音楽が印象強いが、エレガントな曲調が心地よく、聴き入ってしまう。
4.Stonebridge feat. Therese – Put ‘em High (Claes Rosen Lounge Mix)
スウェーデン出身、Sten Hallström。Ne-Yoのリミックスではグラミー賞ノミネートを果たしている。ボーカルはTherese(Eva Therese Grankvist)。
原曲はハウス・トランスだが、ミックスにより透明感とダークさが加えられ、シンセサイザーの美しさが際立つ曲へと仕立てられている。受ける印象をガラリと変えるミックスゆえに、いろんなコンピレーションで取り沙汰されるのも頷ける。
5.Sydenham & Ferrer – Sandcastles (Afterlife Mix)
アメリカ出身のDennis Joseph Ferrerと、ナイジェリア出身のJerome Sydenhamのプロジェクト。リミックスはイギリス出身、Steven Gordon Miller。
原曲はダークハウスだが、Afterlifeらしい見事なリミックスワークによってバレアリックチルへと変貌している。原曲の持つ抒情をより明確に抽出し、自らの世界観と巧みにブレンドさせている。
6.G Club Pres. Banda Sonora – Guitarra G (Afterlife Mix)
イギリス出身、Gerald Elmsによるプロジェクト。リミックスは前曲と同じくSteven Gordon Miller。
原曲は明るめハウスで、しっかりとギターとビートが効いた仕様。それをこれまたAfterlifeのさすがとも言えるバレアリックなミックスにより、その情感を深くしている。ギターの旋律が決して煽情的ではなく、澱みのない風景を感じさせながら、海の果てを望むような切なさを心の奥深くに刻み込んでいく。
7.Chymera – Umbrella (Beatless Mix)
アイルランド出身、Brendan Gregoriyによるプロジェクト。エレクトロニカ、テクノ、ハウスをスタイルとする。’07年にはBeatportアワードのベストチルアウトアーティストの3位に輝いている。
ビートレスだが原曲とそれほど印象が変わるわけではなく、しっかりとアンビエントな雰囲気を感じられる作品。晴れた青空から不意に降って来る雨粒が奏でるような、音の雫を聴いているようにも思える。
8.Mike Monday – When The Rain Falls
イギリス出身、Michael Mukhopadhyay。オックスフォード大学で音楽を学び、DJやプロデューサーとして活躍。音楽制作コーチとしても活動している。
メロディックなイントロと伸びやかな女性コーラスが、どこかサイケデリックで、豊かな幸福感を湛えた海辺へとトリップさせ、心をほどいていく感覚を覚える。
9.Bent – I Love My Man
イギリス出身、Neil TollidayとSimon Mills。2000年のデビューアルバムより。Café del Marにクレジットされている作品のほとんどが収録されている。
哀愁漂う旋律とボーカル。ビートが効いた、古典的な曲調がCafé del Marシリーズの6や7あたりを想起させ、懐かしい印象を受ける。
10.Coco Steel & Lovebomb – Sunset (A Reminiscent Drive Remix)
イギリス出身のChris Mellor(Chris Coco)とLene Stokes(Steel)、Craig Woodrow(Lovebomb)によるプロジェクト。98年発表のアルバムより。リミックスはフランス出身のJay Alanski。
日本でも「ibiza Barealic Moods」というアルバムに、José Padilla選出でクレジットされたことがある名曲。原曲のエスニックなガレージ、バレアリックをA Reminiscent Driveによりスウィートに再構築され、そして自然音や民族感が強調されたバレアリックの極致へと導かれたものとなっている。
11.Chicane – Already There (Album Mix)
イギリス出身、Nicholas Bracegirdle。アルバム「far from the maddening crowds」では、偉大な名曲『offshore』の前に置かれている。
正直、「far from-」に収録されている『Early』『Already There』『offshore』は、3曲合わせて1つの曲だと言っていいくらいに切り離せない。前奏のようでありながら『承』というドラマ性を持ち、その起伏には期待と恍惚を覚えさせる。ここでの『Already There』も次の曲への『承』の役割をきっちりと果たし、新しいドラマを生み出す一助となっている。
12.Bliss – When History Was Made
デンマーク出身、Steffen Aaskoven、Marc-George Andersonを中心に、ボーカルのAlexandra Hamnede、共同作曲者のTchandoによるプロジェクト。
Blissの作曲は生み出された時点ですでに古典的で、完成している。聴き手の精神状態に大きなダメージを与えるほど内省的で、懐古的でもあり、そして絶望に似ている。だがそれは表層的であり、内包されているのは深遠な叙情詩だろう。
13.Penguin Café – Coriolis
イギリス出身、Arthur William Phoenix Young Jeffes。前身であるPenguin Café Orchestraは、’97年にリーダーのSimon Jeffesが脳腫瘍で亡くなり解散。’09年に息子のArthur Jeffesが新たに10人編成のPenguin Caféを始動させた。
短いながら、静かで強い哀愁を帯びたバイオリンの音色にうっとりとさせられる。サンセットを眺めながら聴く束の間、心が慰められるのを感じる。期待感を高めたまま、爽やかな一旦の終幕となる。
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