2005年発表、シリーズ12作目。なんと2枚組CDとなり、ボリュームアップしている。広く認知され、チルアウトを制作するアーティストが増えてきたということだろう。新たなお気に入りの曲も増え、新しいアーティストを知れるのは幸せなことだ。ジャケットはCafé del Mar店内の壁面だろうか。黄色を基調としたポップな配色がとても可愛らしい。
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CD1
1.BUNBURY – SÁCAME DE AQUÍ(DAB REMIX)
Enrique Bunburyはスペインロック界のスター。リミックスには同じくスペイン出身のLuis SanchoとドラマーのPedro AndreuによるDigital Analog Band。
原曲はラテンをベースに、Bunburyが情熱的に歌い上げている。DABによる音の色彩をくっきりとさせたアンビエントリミックスが、Bunburyの力強いボーカルを一切減衰させることなく、より曲の深みを掘り起こしている。
2.SLAVEN KOLAK – ALL SHADES OF BLUE
スペイン出身のSlaven Kolak。
スペイン文化の持つヒッピーな要素を、エレガントなピアノや哀愁を感じるアコーディオン、民族感を想起させるパーカッションなど多彩な楽器を駆使し、ややクラシカルな雰囲気を帯びた曲調でドラマチックに表現している。
3.ELCHO – LAZY SUMMER DAYS
イギリス出身のSteve IslesとJamie Cullumのデュオ。Steve Islesは映画音楽などを手掛けていた。ボーカルはRachel Thomas。
ポップなソング・・・であるが、個人的にはかなり好き。一般受けしそうなわかりやすい、ドラマチックな曲調や歌声がすんなりと耳に入る。誰もが口ずさみやすく、しかしそのポップさやシンプルさゆえに好き嫌いが分かれそうな曲。
4.ALESSANDRO BOSCHI – EMPURIABRAVA
イタリア出身、ピアノやフラメンコをスタイルとする。’08年にInstrumental、Jazz、World部門で「Song of the Year」に輝いている。
シンセサイザーの海を表すような豊かなイントロ。そこからスペインの教会や遺跡を彷彿とさせる荘厳な展開。優雅で切ないフラメンコギターが織り込まれ、心に響く余韻を残す。
5.NEW BEGINNING – ANOTHER DAY
サックス奏者でもあるJohn McGough(’18没)のプロジェクト。CD2のKoru名義にも参加。ボーカルはLinzy Hunter。
ボーカルの秘めたる情熱と切なさが、サックスとギターの音色と調和しながら、まるで夕陽に溶け込んで行くような感覚に包まれる。この曲を海辺で聴けることほど、豊かで幸せな時間はないだろう。
6.MELIBEA – ANTOLOGÍA CAFÉ DEL MAR
David HuertasとPedro SánchesとCarlos de los Santosの3人。
ボサの曲調に少し冷たい音感のシンセが心地よく響く。穏やかな夏の朝、青い空と穏やかに凪いだ海を思い起こさせる音の調和が、涼しげな空気感を創り出している。
7.ARNICA MONTANA – SEA, SAND AND SUN
イギリス出身のRobert LissaldeとJean-Louis Fargier。ボーカルにSarah Warwick。Ibizarreにも「素晴らしい美しさを持つバレアリックアンビエントグルーヴ」と称賛されている。ロリアナミュージックというレーベルで、シリーズ10のKinemaも所属している。
ほんのりとダークで悲哀的なメロディと、哀愁のあるギターが加わり、心を締め付ける切なさを感じさせる。夕陽の沈む砂浜を思い浮かばせ、涙が自然にこぼれるほどの美しさを持った一曲。
8.ALEJANDRO DE PINEDO – AQUARIUS
スペイン出身のAlejandro Gil Pinedo。ポップ、エレクトロニカ、チルアウトをスタイルとする。café del marをはじめ多くのコンピレーションに参加している。この曲は’06年の音楽賞の最優秀エレクトロミュージックにノミネートもされた。
透明感のあるイントロに、情感たっぷりなサックスと、色気を感じさせる女性の懇願するようボーカルが特徴的。天体の水瓶座を指す言葉。ALEJANDRO DE PINEDOは他に『Sagittarius』や『Capricorn』といった黄道12星座の曲を作っている。
9.RAFA GAS & F3R DELGADO FEAT. RAÚL MENDOZA – QUIÉREME OTRA VEZ
スペイン出身のDJであるRafa Gas & F3r Delgado。ボーカルがRaúl mendoza。スパニッシュギターがMauri Báez。
荘厳な始まりから、Mauri BáezのスパニッシュギターとRaúl mendozaボーカル、そしてまるで打楽器にも聴こえる手拍子が民族的なリズムと共に情熱的に押し寄せて来る。
10.ANDRÉ ANDREO – SOUTH BEACH SOUL
ブラジル出身のANDRÉ ANDREOは、クラシックピアノを使用した作曲家であり、映画音楽なども数多く手掛けている。
陽気なサンバ調のトラックで、明るく、快活なリズムが気分を高揚させるこの曲は、晴れ渡る青空の下で聴くのに最適なサウンドとなっている。タイトルの南の海に宿る魂とは、イビサとは違うのだろうか? いや、きっと海を愛する理由は同じだろう。
11.CHRIS LE BLANC FEAT. LIZ JUNE – ENJOY YOUR LIFE
ドイツ出身Christoph Weis。ドイツとイビサに拠点を置く。アンビエントやチルアウトをスタイルとする。ボーカルがLiz June。
軽やかなギターやトランペットが、Liz Juneの囁くような歌声と混ざり合い、応援歌のように「enjoy your life」と訴えかけてくる。この曲が纏う空気感はその歌声のように透明感があり、希望に満ちた優しさがある。
12.JO MANJI – LAZY LOUNGIN
イギリス出身のDavid JonesとDaniel Lozinski。シリーズ9からの再登場。トランペットはDavid Godfrey。
夕陽が沈まんとしているところへ鳴り響く、David Godfreyの伸びやかなトランペットが実にムーディーな曲。シンセサイザーの余韻が夕陽と共に消える様が、まさにバレアリックな空間を描き出す一曲となっている。
13.STEEN THØTTRUP FEAT. ANNETTE BERG – SAVE A LITTLE PRAYER
デンマーク出身のプロデューサー、Steen Thøttrup。シリーズを通してMiroやRemoteといった名義でクレジットされている。今回は同じくデンマーク出身のAnnette Bergがボーカルを担当。
涼しげでありながら、可愛らしい雰囲気を纏った曲。Annette Bergの少しかすれた声とダウンテンポな曲調、繊細なフラメンコギターの旋律が緩やかな空気感を醸し出している。
14.LA CAINA – BAILANDO VA
フランス出身のJean Pierre PlissonとMaxime Plissonの父娘。モダン、ニュージャズ、タンゴ、ボサをスタイルとする。父親のJean Pierreが作曲し、娘のMaximeが作詞、歌を担当している。
ボサノヴァなオープニング、ギターの旋律、Maximeの詩的な歌。それらがうだるような暑い日に、涼しげな風を運んでくるよう。そして聴く者を酔いしれさせるだろう。
CD2
1.BLANK & JONES FEAT. MIKE FRANCIS – SOMEONE LIKE YOU
ドイツ出身のJan Pieter BlankとRene Rungeのプロジェクト。ボーカルはイタリア出身のMike Francis(本名Francesco Puccioni。’09年に肺がんで亡くなっている)。原曲はVan Morrisonの『SOMEONE LIKE YOU』。
Blank & Jonesは海を想起させる曲作りが非常に上手い。そしてMike Francisの低く甘い歌声が、ロマンチックな旋律に溶け込んでいる。Van Morrisonのオリジナルのロマンチックさを引き継ぎつつ、温かみと爽やかさを纏った編曲が、まるで天上のビーチへと誘うかのよう。
2.VIGGO – ESO ES
スペイン出身José Luis Merino。スパニッシュギターを担当はGus M.G.。
透明感のある旋律が風に乗り、ゆるやかなボサノヴァのリズムが軽やかに奏でられる。優しい波音とスパニッシュギターが絶妙に溶け合うこの曲は、太陽が昇り始めるイビサの穏やかなビーチを散歩しているような感覚に包まれる。
3.FRANCESCA M. – MONTREUX JAZZ
スイス出身、サックス・フルート女性奏者のFranziska Meyer。ミズーリ州音楽コンクールで1位を獲得や、音楽大学での学位を取得している。
フラメンコギターとフルートの合奏、そして静かな歌いとポップな曲。晴れやかなブランチタイムを感じさせる曲調。楽しいことが起こる1日を感じさせる曲。
4.LUMINOUS – MAKE IT HAPPEN
イギリス出身のギタリストでもあるGary Butcherによるプロジェクト。Gary B名義でも活躍。ボーカルはJullie Harrington。
Jullie Harringtonの少し掠れたボーカルと、強く掻き鳴らされるギターが感情豊かに絡み合う。切なさを情熱的に訴える曲が、大きな波となって海岸に打ち寄せ、膝下を濡らすように心にも沁みていく。
5.PACO FERNÁNDEZ – JUNTO AL MAR
シリーズでもお馴染み、スペイン・グラナダ出身でフラメンコギター奏者のPaco Fernández(Francisco Fernández Moreno)。
スパニッシュギターが、夕闇に溶け込むように低く深く響く。辺りが暗くなって行く中でも、そのフラメンコギターの音色が燦然と輝いているようで印象的な曲調。
6.LA CAINA – LE VENT M’A DIT
CD1に続いてJean Pierre PlissonとMaxime Plissonの父娘の再登場。
柔らかな朝の光が差し込む瞬間にぴったりの曲。ジャジーなトランペットとMaxime Plissonの可愛らしくも色気のあるボーカル、そしてボサノヴァのリズムが、太陽の光が海を照らし始める瞬間を表現しているようで、爽やかで心地よい空気が漂っている。
7.MAHARA MC KAY – ONE LIFE
ニュージーランド出身のMahara Mc Kayは、マオリ族に囲まれて育ち、美術学校を出た後ミス・スイスコンテストで受賞。音楽の道にも進み、モデルと並行して活躍していたが、怪我・病気により活動を休止。このアルバムが発表された2005年頃から、ヨガや瞑想の道を歩むことになる。
ややアップビートなリズムで、気持ちを晴れやかにする曲調。フルートやギターの音色が情熱的に絡み合う。動き出したくなる衝動を呼び起こしますが、決して過剰にエネルギッシュではなく、むしろ穏やかで心地よい風を感じる一曲。
8.RAFA GAS & F3R DELGADO FEAT. LUCIA MONTOYA – AMANECER EN BOLONIA
CD1にもエントリーされているスペイン出身のDJであるRafa Gas & F3r Delgado。ボーカルはLucia Montoya。スパニッシュギターは同じくMauri Báezが演奏。
繊細なスパニッシュギターの響きと、Lucia Montoyaの乾いた歌声が哀愁を呼び起こし、胸を打つ。力強いエネルギーが溢れつつも、ひと気のない海辺で波に揺られているかのような静けさも感じられる。
9.FRICTION – LOOKING DOWN
イギリス出身、John ReadとVolker Janssen。ボーカルはMartin JenkinsとLiz Overs。
不協和音のようなピアノのイントロと感情を抑えたダブルボーカルが、ダウンテンポな曲調と合わさり、内省的な雰囲気を表現している。
10.PEP LLADÓ – TWO RIVERS, ONE WORLD
スペイン出身のJosep Lladó Arnal。スペインのリセウ高等音楽院でピアノを習得したのち、Francesc Burrullにジャズを学ぶ。ボーカルはTerrae Ignota。
日本語! 非常に滑らかな発音で、曲に不思議な調和を与えている。ドラマチックなピアノと口ずさむ歌のリードで展開する様子が、流れの強い中流を経て、やがて穏やかな海に流れ込むような印象を与える。
11.YANN KUHLMANN – LA MAURITIA
ドイツの作曲家、Yann Kuhlmann。マルチ楽器奏者として、エレクトリックベース、ギター、ドラム、ピアノ、シンセサイザーなどを用いて、国際的に活躍している。また、音楽と並行したヨガスタイルを持つ。
哀愁漂うギターや民族的な打楽器の音色が心地よく響く。心をニュートラルにするchill outの持つ力と、ヨガの体を通じて調和し合う力が通じ合い、内省的だが決して暗くならず、心を開放してくれるような癒しのエネルギーに満ちた曲となっている。
12.NERA & FELIX – CON AMOR
Nera WohlgemuthとFelix Occhionero。ボーカルとキーボードをNeraが、ギターとベースをFelix Occhioneroが、サックスをSteve Hooksが担当している。
Neraの少し低い艶やかな歌声が曲全体をリードし、控えめなサックスや打楽器がより彼女の存在を引き立てている。まさに海辺でのリラックスしたひとときにぴったりの曲で、そよ風が頬を撫でるような心地よさが広がるのを感じる。
13.KORU – OTIS
John McgoughとMatt Wanstallによるプロジェクト。CD1のNew Beginning名義でも活躍していたJohn Mcgoughは、残念ながら’18年に白血病により亡くなってしまった。
悲しげなピアノから始まり、ややダークな雰囲気なダウンテンポ。そこからのサックスの色気が曲をリードしていく。夜の闇の中で煌めくようなサックスの響きは、まるで光を放つゴールドそのもの。やわらかいジャジーな雰囲気が、聴いている時間・空間をロマンティックに彩る。
14.LIGHT OF AIDAN – LAMENT
Phil BaggaleyとDaniel Lozinski。Daniel LozinskiはCD1などでJo Manjiとしても活躍している。2人の個人名でも活動している。短いフレーズのウェールズ語で歌われており「もう戻らないと言う愛しい人を失って、自分には冬しか感じられない」と言う意味らしい。
呪術的な印象すらある歌声と静謐な曲調が、イビサの根源的な民族的雰囲気を匂わせ、遥か空高く浮遊するようにトリップさせる。何もない空を漂っているはずが、曲が終わって初めて現実にいると気付かされる。
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