2011年発表。2CD仕様。パッケージデザインは非常に落ち着いており、Café del Marの店内にあるカウンターを真正面から写しているクラシックな装丁で、地中海建築に使われる装飾施されたタイルのよう。アルバムの印象としては、顔ぶれはそれほど変わらないものの、変化球な作品が多くなったか。
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CD1
1.Glide & Swerve – Y Môr
イギリス出身のIvan ClarksとSimon Glantzのデュオ。ボーカルをSimon Glantzが担当している。
ハウスを感じさせるビートが、ゆっくりと始まりを告げる開幕曲。厳かな歌声が響き、足を踏み入れる先はただのパーティー会場ではなく、歴史ある地であると確信させる。
2.Deep Josh & Jose Rodriguez feat. Lisa Rose – The Clouds
ともにスペイン出身のJosué García BermejoとJosé Antonio Rodríguez Navarro。ボーカルはイギリス出身のLisa Rose。
軽妙なピアノのイントロ。ダウンビートに重なるジャジーな旋律と、Lisa Roseのボーカルが、陽が沈んだ後の情景のように穏やかさを取り戻していく。
3.Stefano Carpi – After the Sea
イタリア出身、Stefano Carpinella。Sandro Bartolozzi、アレンジはFranco Poggiali。
柔らかなイントロが優しい潮風のように体を包み、清々しいサックスが海面を煌めかせる日差しを思わせる。リゾートビーチの午後。さざ波と太陽、そして微睡みのひとときが音に変わり、聴く者を日常から遠く引き離す。
4.Clélia Félix – Shine So Bright
フランス出身の女性シンガーソングライターであるClélia Felix 。ポップ・フォークを主体として、トリップホップ・ダウンテンポをスタイルとする。
ノリのいいオープニングから、哀愁を漂わせるメロディへと移り、静かに体を揺らしながら、海を見たり陽を浴びたりする時間を思わせる。
5.Glenn Main – Message to Spain
ノルウェー出身、Glenn Main Henriksen。ジャンミッシェルジャール、ヴァンゲリス、喜多郎などの影響を受けた。
電子音が紡ぐアンビエントラウンジと言ったようなところか。モダンでありながらどこかクラシックな旋律が、スパニッシュなハーモニーに対する歴史や文化へのオマージュを思わせる。
6.Luis Hermandez – Smile
ドイツ出身、Ingo Herrmann。ダウンテンポ、ディープハウスをスタイルとする。
今作はラグジュアリーで疾走感のあるディープハウスに、ジャジーなリズムが妙味を生み出している。シリーズ16の『Rain Of Love』同様、チルできるかといえば怪しいところだが、その作風はクールではある。
7.Joy Askew – Starlight
イギリス出身、女性歌手Joy Askew。Additional soundsとしてTakuya Nakamuraの表記がある。
陰りをもったドラムとギターを携えたブラスバンドスタイルで、アンニュイなボーカルが印象的。ディープな雰囲気によって、夜の底へとに引き摺り込まれるような感覚を覚えさせられる。
8.Paco Fernández – Mani in Da House
スペイン出身、Paco Fernández。共作にSteve Fernández、Joan Ribas。Joan Ribasはイビザで生まれ、Pachaで20年近くレジデントDJとしてプレイしていた。
スパニッシュでありフラメンコ。Café del Marの歴史を紡いできたPaco Fernándezの安心感たるや。シリーズ5にクレジットされているタイトルが『Mani』だった。意味は汲み取れないが、彼がCafé del Marに存在していることが喜ばしい。跳ねるようなビートやエスニックなサウンドが、熱の込められた曲になっている。
9.Bob Zopp – Mi Novia
イギリス出身、Robert Zopp。ドラマーとして出発し、EDMのプロデューサーとして活躍。
スパニッシュギターの哀愁ある音色が、アルバムの谷場を心地よくチルさせてくれる。巧みに使われるクラップ音をベースに、引き算された曲の魅力を印象付けている。
10.Stéphanie Mathieu – Take Time
Stéphanie Mathieu。情報取れず。
スロービートに伸びやかな歌声。歌自体はポップだが、その柔らかさとサンセットの情景はマッチするだろう。暑い時には落ち着かせ、冷えた体には少し温かみをもたらすような、まるでレイヤリング機能を持った楽曲。
11.Music On Canvas feat. Tabitha – Upside Down
Peter Larsenの個人プロジェクト。Tabitha Christophersen。Peter Larsenはドキュメンタリーやドラマの音楽を制作している。
ややダークなダウンビート。日没〜夜のしっとりとした時間の演出に良さそう。どうも北欧出身らしい? ゆえの冷涼さを感じる作品。
12.Michael Hornstein – Boom Boom
ドイツ出身、サックスフォン奏者のMichael Hornstein。グラーツ音楽大学で学んだ後、ジャズや現代音楽、クラブカルチャーに身を置いてきた。
色香を纏ったサックスに、讃美歌のようなコーラス。そして詩的な女性と男性のボイス。緊張感のない、緩やかな厳かさ。どこか相反する魅力を持つ曲に酔いしれながら、サンセットを眺めていたくなるだろう。
13.J. R. Haim – Lejos…
セルビア出身、Johan Rafael Haim。シリーズ15からの登場。ミキシングやマスタリングなどのトラック制作を主としている。
突然始まる、悲劇映画のようなイントロ。荘厳なシネマティックサウンド。名前や雰囲気から、シリーズ5のA.R.Rahmanを思い浮かばせる。中盤からはジャジーなサックスの音色とダウンビートが重なり合い、浜辺に腰をかける者たちにエスニックな風を届けるような展開。
14.Atlan Chill – September
スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。Atlan Chill名義ではシリーズ15からの再登場。Fernando Marañon Sánchezはシリーズ14から精力的に活動している。
Fernando Marañonのサウンドも一聴しただけで同定できるほどに特徴的だ。雷鳴が鳴り響き、まだ雨が滴り落ちる中、雨雲が風に吹かれ澄んだ青空を見せる。濡れた石畳が清々しい光を反射し輝くよう。まだ暑いであろう9月でも、季節は移ろい、その情景を曲に乗せて鮮やかに耳元に広がる。
CD2
1.Luminous – Forever
イギリス出身、Gary Butcher。ボーカルはJullie Harrington。
ギターの旋律に乗せた、デュエット。ライブ感のあるアコースティックな雰囲気が漂う。サンセットに合わせて設られた、特別なステージのよう。大袈裟にサンセットの情感を煽り立てるわけではなく、自然なメロディが心地よい。
2.J. R. Haim – Puesta del Sol
セルビア出身、Johan Rafael Haim。CD1から再びクレジット。
夜を迎えるために鳴り響く虫の音と、サンセットムードをたっぷりと蓄えた曲調。牧歌的な雰囲気もあり、水平線に沈んでいく太陽を見届ける時間を丁寧に紡いでいく。タイトルが示す「日没」が、スパニッシュギターの旋律によって彩られ、惜しまれながら少しずつ姿を消す様が想像できる。
3.Sabrina Carnevale – Nobody Can Say
イタリア出身、Gennaro MorraとSabrina Carnevale がボーカルも担当している。
カンツォーネを彷彿とさせるポップなボーカルと、陽気なラウンジ感が漂い、日常の疲れを忘れさせる楽しく心が弾む一曲。
4.Luis Hermandez – A Tu Lado (Instrumental Mix)
ドイツ出身、Ingo Herrmann。シリーズ15、16と出演し、本作では3曲がクレジットされている。
ギターとサックスで構成され、今までとは一風変わったしっかりとチルに寄った作風。ゆったりとしたギターが心地よい響きを奏でる。タイトルにインストとあるように、まるで歌声が聴こえてきそうなメロディラインをした曲調。
5.Glide & Swerve – Aasha
イギリス出身のIvan ClarksとSimon Glantzのデュオ。ボーカルをSimon Glantzが担当している。
インディーな響きのイントロ。伸びやかなボーカルが、エスニックな曲と混ざり合う。終始癖のある曲調。田園的な鄙びた雰囲気を持ち、しっかりと夕陽に照らされる街並みを想像させる力がある。
6.Alejandro De Pinedo – Raindrops
スペイン出身、Alejandro Gil Pinedo。シリーズ12から1曲ずつ欠かさずクレジットされている。
星空のモチーフとは少し違うシリーズ。優しい雨を感じさせる。オープニングはゆったりと、中盤のサックスが奏でられる部分からはややアップテンポに、ムードと気持ちを静かに盛り上げてくれる。空からの涙のように滴る雨粒が、まるで身を清めてくれるかのよう。
7.Mahara Mckay & Minus 8 – Beautiful Day
ニュージーランド出身のMahara Mckayとスイス出身のMinus 8(Robert Jan Meyer)。Mahara Mckayはマオリ族として育ち、ミススイスや音楽でも成功を収めている。シリーズ12が発表された2005年頃から、ヨガや瞑想の道も歩んでいる。
シンセサイザーが深淵なムードを漂わせ、気が付くと、どこか深い森の中の広場に出たような気分にさせられる。木漏れ日に滝の水飛沫が輝き、崖の淵に佇んで広い世界を見渡しているよう。
8.Ingo Herrmann – Inner Truth
ドイツ出身、Ingo Herrmann。このアルバムで3曲目。
ダウンテンポでダークなビートが、持ち前のディープさを惜しげもなく披露してくれている。波の存在しない水面や、明かりのない水底を思わせる。たくさんの音が鳴りながらもどこか静謐な神秘さも漂わせている。後半のギターがより哀愁と望郷の念を駆り立てる。
9.Coastline – Adriatic Sea (Milews remix)
フィンランド出身、Toni Simonen。シリーズ16にクレジット。リミックス担当はドイツ出身のRagi Swelim。
原曲の『Adriatic Sea』も美しいが、リフトアップされたリズムがより広大さを感じさせるリミックスワークとなっている。強い日差し、海の青さ。どれをとってもその心象風景は美しいばかりだ。
10.Gitano & Deep Josh feat. Koo – Residence Lounge
Wrriten by Francisco garcía、Koo、スペイン出身のDeep Josh。ボーカルはIvanna。ギター担当がGitano。
スパニッシュギターが奏でる、極上の旋律。この音色だけでもしっかりとトリップさせてくれる。テラスに座り、髪を撫でる風の心地よさに、海の彼方の日常に思いを馳せているよう。
11.Crystin– Something Beautiful (Red Roses remix by Lemongrass)
ドイツ出身の歌手・作曲家でプロデューサーのCrystin Fawn。リミックスは同じくドイツ出身、Roland VossnのプロジェクトLemongrass。
クリスタルなイントロに、硬質で冷たくも芯のあるボーカルが、緩やかでジャジーな曲によく合う。ダウンテンポで哀愁をもったポップさ、硬くて脆いような、相反した雰囲気をたっぷりと感じさせ、聴くものをチルさせ、興奮させる。
12.Solaris Navis – Blissful Memories
フランス出身、Clélia Félix。
透明感のあるシンセサイザーが、足元を掠める透明な波のように押しては引いている。ロマンチックな低音を効かせたギターの音色。ブルースのような響きとアンビエントなハーモニーが、海へと溶けていく太陽を想起させる。
13.Elimar – Prosody
イギリス出身、Elimar。イビサに在住し、Ibizarreなどとも親交がある。
映画音楽の、しかもドラマティックでサスペンスのような雰囲気を讃えた曲調。怪しげなボイスがさらに臨場感を掻き立てる。このアルバムの中で最もチルかどうか疑問を覚える作品。チルの定義は制作者、受け手それぞれだが・・・。
14.Elmara – Transit
スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。
落ち着いた旋律が魅力のピアノや弦楽器が、モノクロ映画のような終幕を彩っている。真っ暗な映画館に、擦り切れたフィルムのような画質の映画が映され、追憶のフィナーレを飾り、静かに幕が下ろされる。
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