2000年発表、同年にシリーズ7を発表している。2CD仕様。Café del Marのナンバリングシリーズにも出演しているアーティストはいるが、20周年記念版でありベスト版ではないため、新たな収録アーティストが並んでいる。収録曲や収録アーティストが非常に多彩で個性的であり、Café del Marのチルアウトという概念の広さに驚かされる。
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CD1
1.Nimbus – Subconscious Mind
イギリス出身、Harry Peat。映画やテレビのサウンドクリエイターで、Nimbusの他にLost Unicornsや本名名義でのアルバムもリリースしている。
まるで風に乗った巨大な雲がゆっくりと姿を現すようなイントロ。そこへ呪術的なコーラスがうっすらと乗って聞こえ、やがて笛の音と男のアテンダントするボイスが、雲をはるかに超える上空を飛行しているような気分にさせてくれる。普段の生活の中で囚われてしまっている自らの潜在意識を、イビサへ行くまでの風景で気付かされるのかもしれない。
2.Deep & Wide – Seven Seas
フランス出身のBruno Lepretreと、デンマーク出身、Ibizarreとして活躍しているLennart Krarupのデュオ。同年発表のシリーズ7にもクレジットされている。
世界海洋、グローバル・オーシャン・・・そのつながりを海中を泳ぐ何ものかになって進んでいるように感じる。少しずつ変わる景色や水温、その透明さや波の強さが曲調となって表現されている。
3.Envers Du Plan – I Want Your Love
イギリス出身のSimon GannonとSteve Harrisによるデュオ。ボーカルはFayleine Brown。
ややダークでノイジーなイントロが、夜を開幕させる。海辺の街並みがネオンで輝き、人々を活気付かせる。ハウス感のある曲調にFayleine Brownのボーカルが静かに熱を与え、聴く者に高揚感を与えている。
4.Trüby Trio – Prima Vera
ドイツ出身、Rainer Trüby、 Roland Appel、Christian Prommerのトリオ。ニュージャズやブロークンビートをスタイルとする。
ドラムやパーカッションの打楽器がメインで、ジャジーに展開する曲。速めのビートが気分を持ち上げる。鬱蒼と茂ったジャングル、のような内装をしたクラブハウスの中、色とりどりの光線を浴びながら、皆体を揺らしているような光景が目に浮かぶ。高揚と落ち着き、清濁併せ持つ。
5.Fluff – Mums
デンマーク出身、Jan WintherとMarc-George Andersen。アンビエント、チルアウトをスタイルとする。
クリスタルのような透明感と光沢を感じさせ、正統派バレアリックといった雰囲気も持つ。ゆったりとしながらもドラマチックな展開は、昼下がりのビーチでのんびりとその世界に浸りたくなる。
6.Afterlife – Falling
イギリス出身のSteven Gordon Miller。ボーカルはRachel Lloyd。
どこか煙た気なダウンビートにRachel Lloydのアンニュイなボーカルがマッチして、聴く者の体から余計な力を抜いていくようにも感じる。トリップホップのリズムが、時間の流れを遅くするような錯覚さえ覚えさせる。
7.The Horns Of Plenty – Altogether Blue
Rod McveyとRoss Grahamによるデュオ。
マジックアワーに響き渡るサックスが印象的で、非常にムード溢れる曲。ビートはあるのだが、静寂すら感じる。その水平線を青く、暗く染めていく風景を眺めては何かを想うのだろう。その美しさに浸る豊かな時間に、言葉はいらない。
8.Almagamation of Soundz – Enchant Me (Original Version)
イギリス出身のJean-Claude ThompsonとMark Harbottleのよるデュオ。ボーカルにYvonne Webbley。
ダウンビートなリズムに、Yvonne Webbleyのボーカルが情熱の強弱を付け加え、海のような波を生み出している。ジャズやハウス、ドラムンベースといったスタイルを融合させ独自の世界観を築いている。室内でも屋外でも、そのビートに体を預けて浸りたい曲。
9.Single Cell Orchestra – Transmit Liberation
アメリカ出身、Miguel Angelo Fierro。ハウス、アンビエント、トリップホップをスタイルとする。
ディープなイントロから、ダウンなアンビエント。目立つ展開はないが、バックグラウンドミュージックのようにさりげなく空間を演出している。トリップホップの発展に影響を与えた一曲とされている。
10.Ypey – Behind The Screen
フランス出身、Gregory Grimaldi。
イントロから独特なビーツを刻み、ピアノがそれに合わせて同じようにリズムを刻む。海岸線の岩場をゆっくりと歩き、高所から遥かな海を眺める。過去を振り返りながら歩き、内省的な物思いに耽るような味わいのある曲。
11.Moodorama – Jazz Tip
ドイツ出身、Mertin Sennebogen、Kerstin Huber、Marco Köstler、Bernhard Frank、Mario Malzerによるエレクトロバンド。ジャズ、ラウンジ、ボサノヴァ、ハウスをスタイルとする。
『Jazz Tip』というタイトル通り、トリップホップとジャズの融合した作品。甘く、低く響くドラムをベースに、フルートやパーカッションなどが絡みつく。その乾いたような、まとわりつく雰囲気が心地よい。陽が落ち、夜へと移る色の変化をずっと眺めている贅沢な時間を演出している。
12.La Rocca – Island Of God
スペイン出身、Ignacio Sotomayor Román。アンビエントやダウンテンポをスタイルとする。シリーズ10ではNacho Sotomayorという名義でクレジットされている。
インディーな雰囲気のあるフルートやビート、コーラスが特徴的な作品。どこか、肌に吹き付ける潮風を感じる。どんな神が住まう島だろう?
13.Solaris Heights – Elementis
イギリス出身のBryan RobsonとAnton Fielding。
開幕から、ノリのいいアップテンポなパーカッション。やや攻撃的なビートを持ったハウスに、哀愁あるメロディが絡み合い、ブレイクさせる。陽が落ちる前には一騒ぎしたいところ。踊るにも落ち着けるにもちょうど良いビートが非常に心地よい。
CD2
1.Mental Generation – Cafe del Mar
デンマーク出身、Jan Kjølhede Meedom & Steffen Andersen(本名Steffen Aaskoven)。Jan Kjølhede Meedomは’17年にALSにより逝去。Steffen Andersenはデンマークを拠点とするBlissの一員。本作はUnderworldがリミックスしたものも話題になった。
チルアウト・ブレイクビーツとして大ヒットした本作。ややサイケデリックなメロディラインに、重めのビート、ピアノのリフティングやラップが印象的に響く。チルアウトとしてはかなりソリッドな仕上がりであり、そのクールさに取り憑かれる人も多いのでは。Underworldのミックス版は、さらにディープなテクノ感を添え、この楽曲を新たな次元に引き上げている。
2.Jean Michel Jarre – Oxygene
フランス出身、Jean-Michel André Jarre。特筆すべきエピソードは、1986年のチャレンジャー号打ち上げに際し、宇宙から飛行士であるRonald McNairによりサックス演奏をアルバムに収録するはずだったが、打ち上げ失敗の事故により、のちに収録された曲が『Ron’s piece』として捧げられた。ちなみに本作に収録されているのは数ある『Oxygene』のPt.4。さらに余談だが、Chicaneの『Thousand Mile State』のアルバムは、Jean Michel Jarreの『LES CHANT MAGNETIQUES』をオマージュしており、完璧に左右対称となっている笑。
ややアップテンポな曲調に、近未来的な映画サウンドのような効果が混じる作品。café del mar初期のThe Metaluna Mutantのような雰囲気を感じさせる。
3.Dave A. Stewart feat.Candy Dulfer – Lily Was Here
イギリス出身、David Allan Stewart。最優秀プロデューサー賞を3度、’22年にロックの殿堂入りを果たしている。Candy Dulferはオランダ出身のポップサックス奏者。
ロックミュージックをそのままベースに、エレキギターとサックスが織りなすメロディは、甘く切ないロマンスを感じさせる。夕暮れ時の、オレンジ色に染まるビーチにしっかりとマッチする曲調が、どこか古き良き時代といったノスタルジックさを持つ。
4.Jon & Vangelis – So Long Ago, So Clear
イギリス出身、Jhon Roy Andersonとギリシャ出身のVangelis(本名Ευάγγελος Οδυσσέας Παπαθανασίου)によるプロジェクト。Vangelisはアンビエントやプログレッシブのスタイルをもち、特に映画『炎のランナー』や『ブレードランナー』が有名。’22年に亡くなり、世界中に報じられた。
Jon Andersonのアルトテノールのクリアなボーカルと、Vangelisのアンビエントを超えた荘厳なクラシックとも言える曲。電子の天使が舞い降りるかの如く神聖な作品であり、どんな人々も胸に手を合わせるであろう姿を容易く想像させる神秘さを漂わせている。
5.Foundland – Cloud Pattern
スウェーデン出身のKristoffer WallmanとArne Johansson。
北欧の冷たい風が吹き抜けるような感覚に包まれる曲に、電子的なリズムとキーボードのひんやりとした響きが織りなす音像は、ファニーでありながらも環境音楽のようなリアルさを感じさせる。しっとりと落ち着く、というよりはもはや自然物に近い岩や水や木々の営みそのものに思えるような曲である。
6.Brightlight – Feeling Weird (Original Cafe del Mar Mix)
デンマーク出身、Leif Berg Jensen。父親の影響で、前出のJean Michel JarreやVangelisを聴いて育った。ダウンテンポ、ハウス、アンビエント、ドラムンベースをスタイルとする。
北欧の静寂感を醸す電子的なビートの刻みが、どこか冒険心を感じさせる。ボートの舳先に立ち、そこはまだ夜明けの青白さ、周囲には霧掛かる凍てつく海を進むような印象。
7.Tony Stevens – Good Night The Sun
イギリス出身、Tony Stevens。ブルースロックバンド、 Savoy Brownにベーシストとして参加。その後にはFoghatというバンドにも参加していたが、イギリスを離れるツアーを嫌い脱退している。
ロックベースのムーディーな曲。これもまた一時代を感じさせるメロディである。少しずつ色褪せる音楽も、触れるたびに新たな発見があり、また別の曲の礎となる。こういう曲はぜひ、年を重ねた熟年のミュージシャンにサンセットをバックに生演奏してほしい。
8.Andreas Vollenweider – Behind The Gardens,Behind The Wall,Under The Tree
スイス出身のハープ奏者、Andreas Vollenweider。ワールド、ジャズ、ニューエイジ、クラシックをスタイルとする。独自に改良したエレクトロアコースティックハープを使用する。
タイトルからも、広い敷地内で演奏されるラウンジ的な印象。非常に牧歌的で、平和的な音楽。スイスのアルプスの緑を想起させ、リラックスさせる。
9.Cafe del Mar – Irish Women (Traditional Irish)
スペイン出身、Julio Palaciosがプロデュース、Javier Bergia Garcíaがアレンジ。
荘厳なイントロ。そして特徴的な笛?の音と、こちらも特徴的なオルガンだろうか、ジャジーな演奏が非常に感情を揺さぶる旋律を奏でる。これらはアイルランドの楽器なのだろうか? 北欧の女性がはるか南下し、真夏のイビサに立ち演奏するという想像の翼を押し広げる。新しいエッセンスを歓迎する柔軟さ。そして融和し、新しい時代の始まりみたいなものを感じさせる。
10.Christian Alvad – Rite
デンマークのギタリスト、Christian Alvad。
クラシカルで荘厳な雰囲気を湛えている。長いシンセのイントロから、エレクトロなギターの悲哀を感じさせる旋律。中盤からその様相を変化させ、動物の鳴き声と共に、まるでオーロラが輝きだすかのように幻想的な空気を映し出す。
11.Garland Dr. L. Subrahaniam feat. Svend Asmussen – Offering Of Love
インド出身のLakshminarayana Subramaniamとデンマークのジャズギタリスト、Svend Harald Christian Asmussen。Svend Asmussenは’17年に100歳という長寿で亡くなっている。
インディーな雰囲気を醸すギターの演奏が、非常にスムースで切ないジャズとなっている。ピアノの控えめな旋律がシネマティックなムードを添え、20周年を迎えたカフェ・デル・マーの物語を静かに締めくくる。
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