2005年発表の25周年記念版となる本作は、3枚組構成となっており、CD1には過去に参加したアーティストをメインに、CD2・CD3ではファン投票により人気の高かったアーティストがクレジットされている。非常に上質で多彩な楽曲構成となっており、これまでの25年間を彩ってきた音楽の軌跡を感じさせながらもCafé del Marはまた新たなシーズンへ転換したと見受けられる。
今回は3枚組なので、あまりにレビューが長くなるので、3分割しています。
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CD1
スペインらしい叙情を感じることができる作品群。突出する曲がなく調和が取れており、聴き込むほどに味わいが深くなる。どれもがCafé del Marのテラスで聴くのにぴったりな印象。
1.Lovers Lane – Private Session (25th Mix)
フランス出身、Café del MarレジデントDJのBruno Lepretreとドイツ出身のAnsgar Üeffink。トロンボーン担当はJohn Welsh。ボーカルはWayne Martin。
「Thank you,thank you」と観客への感謝と愛を伝える、低音の渋い声。観客から「Bruno!」と声をかけられているので本人のボイスなのかと思っていたが、どうやらWayne Martinのようだ。要所に挟まれるトロンボーンや、ボーカル、会場の沸き立つ様子が非常にユニーク。序幕の曲ではあるが、これからの期待を膨らませてくれる。
2.Vargo – Talking One Language (Anniversary Mix)
ドイツ出身、Ansgar Üeffinkによるプロジェクト。ボーカルは同じくドイツ出身のStephanie Hundertmark。
ドラマティックで心地よい曲。ダウンなボーカルの合間に挟まれる、各言語の詩。カタコトの日本語がユニーク。世界中の言葉を一つにするという、異文化の共存を体現しているイビサを象徴しているのだろう。
3.Ludvig & Stelar – Reflection
クロアチア出身、Damir LudvigとGoran Stetic。ボーカルはPhil RossとHelena Monika Berkovic。シリーズ11に引き続くエントリー。
ダークなダウンビートから、民族的な打楽器と男性の囁き。ピアノとサックスによる、非常にディープでジャジーなアンビエントが絡み合い、それが夕陽の中で逆光に照らされながらサックスを吹いている姿を連想させる。
4.Lumininius – I Believe in You
Luminous名義と少し変わるが、イギリス出身のGary ButcherとJullie Harringtonの別名プロジェクト。
夕陽をのぞむビーチに相応しいゆったりとしたピアノメインの曲に、Jullie Harringtonの伸びやかで透明感のある歌声が聴く者を優しく包み込むように響く。
5.Jo Manji – Innocence
イギリス出身、Daniel LozinskiとDavid Jones。シリーズ9からの登場。Daniel LozinskiはLight of Aidanとしても活躍している。
楽しげで、陽気さのある曲。中盤からボサが加わり、明るい希望を感じさせる曲は珍しい。軽やかなドラム、優しい旋律のピアノが溶け合い、穏やかな波の音を聞きながら過ごす時間を思わせるような一曲となっている。
6.Henrik T. – Espiral
コロンビア出身、Henrik Takkenberg。ボーカルはCarmen Estzéves。
ビートとフリューゲルホルンが爽やかに曲を彩り、Carmen Estzévesのユニークで可愛らしいスペイン語のボーカルがマッチする。どこか蜂蜜酒のような甘さを伴った陶酔感をもたらす曲。昼前からほろ酔いのいい気分にさせてくれそうだ。
7.Zuell – Albariza
スペイン出身のJesús Martínez、Carlos Guinart、Estéve Puigの3人。ブレイクビーツやダウンテンポをスタイルとする。
緩やかなイントロ、どこか民族的な印象を受けるハミングやディープハウス的なビート。中盤からの旋律は、夜の景色を思い浮かばせる。幻想的な灯火に照らされながら、イビサの民族衣装を纏った踊り子たちが魅惑的な踊りを披露する姿が目に浮かんでくる。
8.André Andreo – Sensual Bay
ブラジル出身のAndré Andreo。同年発表のシリーズ12にも登場。
澄んだ海に飛び込むような爽快感と、太陽が照りつけ波飛沫がキラキラと輝いているような雰囲気を感じさせる。多様な楽器が各所で曲を彩り、ダンサブルにまとめ上げられている。メインのピアノの効果が特に素晴らしい。人々の気分をしっかりと上げてくれるバレアリックハウスナンバーだ。
9.Digitano feat. Pepe Haro – El Kiosco
スペイン出身、Juan José Valmorisco Martínによるプロジェクト。そしてスペイン出身のフラメンコギタリスト、Pepe Haro(本名José Luis Castaño Haro)。フラメンコフージョンをスタイルとしている。
スパニッシュギターが爽やかに掻き鳴らされ、明るく晴れやかなラテンのリズムが輝きを放っている。ギターの弦を弾く指遣いがすぐ近くに感じ取れそうなライブ感があり、午前中のカフェでの生演奏に、コーヒーを飲みながらそのメロディの波に浸れる。
10.A Man Called Adam vs. Chris Coco – Knots
チルアウト界ビッグネームである2組、ともにイギリス出身AMCAのSally RodgersとSteve Jones、そしてChris Coco(Chris Mellor)による共同合作。
パーカッションと緩やかなシンセサイザーが調和し、まるで木造船に乗って波に揺られ、冒険ではなく遊覧でもしているような穏やかな雰囲気を作っている。沖合の色の濃い海を眺め、潮風に吹かれながら船は進む。
11.Gary B. – Lead Me Home
イギリス出身、Gary Butcherソロによる登場。
クラシカルなピアノとディープなビートが、大仰ではないがどこか畏まった雰囲気のある曲調。電子的に加工されたボーカルがラジオのように流れ、空っぽの建物に響き渡っているよう。住人はビーチへと出かけているのか、窓を全開にし、風が吹き込む部屋にシーリングファンだけがクルクルと回っているような、ノスタルジックで少し寂しい景色が目に浮かぶ。
12.Rue du Soleil – La Française
スイス出身のAlfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio Montuori。今回はライナーノーツにAndia Bischof-Foehrの名前はなかった。ボーカルはフランス出身のMathilde Turpin。
アコーディオンが奏でる旋律が、どこか懐かしさを抱かせる。Mathilde Turpinのフランス語ボーカルがシネマティックな感傷を呼び起こし、その深い情感は決して華美ではなく染み渡るように耳に入る。
13.Gelka – Hidding Place
ハンガリー出身、Domotor SandorとKurti Csaba。ボーカルはMonori Gabriella。ギターはDando Zoltan。Gelkaには「夢のような品質」という意味がある。
のんびりとしたスパニッシュギターとウミネコ、Monori Gabriellaのボーカルが、実にリラックスできる曲調。何もかもが穏やかに流れ、まるでイビサの隠れた入り江で、海風を感じながらひとり静かに休むような心地よさが広がる。わかりやすいバレアリックヒーリングだが、その美しさを最大限に引き出している。
14.Digital Analog Band – The Call
DAB名義で登場していたキーボード奏者のLuis Sancho HijarとドラマーのPedro Andreuのデュオ。ギターはNacho Estéves”El Niño”。ボーカルはAimee Ruiz。
目を閉じると小さな波が寄せる浅瀬を想起させる、精緻なサウンドスケープ。ギターやドラムが織りなすビートが寄せては引き、時が止まったかのような穏やかな空間を感じさせる。ハンモックに揺られながら、贅沢な時間を過ごすような感覚。
15.Ypey – Life Time
フランス出身のGregory Grimaldi。
心地の良いビートがゆっくりと歩を進めるように響く。ギターの音色に相反するようなノイジーなサウンドがより情感を引き立て、静か過ぎず騒ぎ過ぎず、心地よい混ざり合いを生み出している。まだ明るいうちからのんびりとアルコールを楽しんだり、海岸沿いを散歩するような、リラックスした時間を表現している。
16.Olaf Gutbrod – Moment of Passion
ドイツ出身、Olaf GutbrodはOHM-Gとしてシリーズ10にてBrunoと組んでいる。
スパニッシュギターとゆったりとしたビートが彩るメロディに、ファニーな雰囲気が漂う。左右のステレオを音が行ったり来たりと、臨場感を駆り立てる。昼前の陽光を浴びながら、波打ち際を歩くような軽快さを持つ曲。
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