2005年発表の25周年記念版となる本作は、3枚組構成となっており、CD1には過去に参加したアーティストをメインに、CD2・CD3ではファン投票により人気の高かったアーティストがクレジットされている。非常に上質で多彩な楽曲構成となっており、これまでの25年間を彩ってきた音楽の軌跡を感じさせながらもCafé del Marはまた新たなシーズンへ転換したと見受けられる。
今回は3枚組なので、あまりにレビューが長くなるので、3分割しています。
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CD3
しっとりと落ち着いた曲が並び、強い哀愁を感じさせる曲もある。基本的に暗い曲調が多いが、ゆえに美しさの深淵というものを感じられる。Jean Pierre Plissonの活躍が多すぎるが、それでもアルバムの価値をしっかりと担保している。
1.Leslie Round – Calling Back
La Cainaとして活躍しているフランス出身のJean Pierre PlissonとMaxime Plissonの変名プロジェクト。4曲目Zednah、9曲目のProdoxoと12曲目のJoke SocietyもPlissonのプロジェクト。やりすぎである。
壮大な開幕曲。アコースティックなパーカションやギター、Maxime Plissonのボーカルが綺麗に響く。余計な音を排除しているためそれぞれが際立ち、静かな音の滝を受けているような感覚。バックライトにスモークがゆらめき立っている中を、顔の判別もつかない真っ暗なシルエットが歌っている。
2.Koru – The Meeting
イギリス出身のJohn McGoughとMatt Wanstallのプロジェクト。
悲しげな音律のピアノから、John McGoughのサックスが叙情的に重なる。夕焼けを想像・・・よりも、個人的には雨の日を想像するほうが容易く感じる。サンセット時に聴くには、かなり寂しい気持ちにさせる曲。ともすれば非常に暗く落ち込みそうな曲だが、ひとりを感じていたいチルな時間もある。
3.Steen Thøttrup feat. Anne K – I Hope Yesterday Never Comes
デンマーク出身のSteen Thøttrup。Mads ArpとのMiroとして早くから活躍している。ボーカルはAnne K。
北欧をイメージするような海鳥の飛ぶ海を垣間見せるオープニング。そして悲哀を感じさせるチェロが響き、Anne Kの澱みのないボーカルが囁きかける。夕暮れのビーチで聴いていれば、どこからともなく吹いてくる涼しい風を全身に感じることができそうだ。
4.Zednah – Voluptuous Sunrise
父親であるJean Pierre Plissonのプロジェクト。フランスのサックス奏者のNicolas Scheidが参加。
銅羅がなったような音から始まり、すぐにNicolas Scheidの伸びやかなソプラノサックスがこだまする。緩やかなダウンテンポの中に、どこかアジアチックなテイストを感じる。Leslie RoundやMic Max名義とは違う音楽を堪能できるあたりが底力を感じさせられる。
5.Marc Puig – To Start Anew
スペイン出身のMarc Puig。ボーカルにMaria Collado。サックスはXavier Roger。
綺麗系ボーカル、そしてサックスというありきたりな感動系チルアウト・・・にも思えるが、やはりその曲と歌は美しい。この25周年記念版で、チルアウトにはサックスやボーカルが必要だとばかりに印象付けている。マジックアワーの夕空が、赤と青が溶け合いながら次第に暗くなる情景から目を離せなくなるだろう。
6.New Beginning – Nuevo Comienzo
2曲目のJohn McGoughによるプロジェクト。
John McGoughのサックスをたっぷりと堪能でき、その音色を聞いた瞬間に、イビサの世界一美しいと言われた夕景のビーチへとトリップさせられる。夕陽が沈む瞬間とマッチする曲に、目頭も熱くなりそうだ。サックスもその時代のトレンドなのだろうが、きっちりと上質な空間を作り上げている。
7.Chrome vs. Reyne – Newex
ニュージーランド出身のJohnny Chrome(本名Glenn Robert Bellham)と、同じくニュージーランド出身のJordan Reyne。
ファニーで柔らかい曲。ビーチの上空を飛ぶシャボン玉のよう。その優しい歌声ゆえに、無邪気さと心地よさが溶け合い、自然と笑みが生まれそうな雰囲気を湛えている。
8.The Light of Aidan feat. Zia Williams – Snowbird
イギリス出身、Phil Baggaleyによるプロジェクト。ボーカルに Zia Williams。
のどかな風景を表すような、柔らかく優しい音楽。朝のやわらかな光の中で聴きたくなるような、希望にあふれたサウンドが特徴的。シマエナガのような雪鳥が、健気に光の中を羽ばたく姿を容易に想像させる。
9.Prodoxo – Bailanduna
またまたJean Pierre PlissonとMaxime Plisson。
ややダークなイントロ。少し荒れ気味な海が、やがて軽快なリズムに合わせて太陽が顔を出してきているように爽やかな空気感を纏い出す。終始、音の構成は少なめだがゆえに楽器それぞれの個性が際立つ展開となり、Maxime Plissonのハミングも楽器となって一つの曲を作り出している。
10.Elcho – Stop the World (Aquatint Mix)
イギリス出身のSteve IslesとJamie Cullumのデュオ。同年発表のシリーズ12にも参加。ボーカルはEsther Alexander。
クラシカルなピアノに、やや冷たさを感じる旋律とボーカル。ダウンテンポながらややプログレッシブさのあるアンビエントが、彩度を抑えた水彩画のような印象を与える。もしくは水中から空を見上げ、鈍い陽光が差し込んでくるかのような、揺らぎのある世界を感じる。
11.Arnica Montana – Memories of the Seas (Café del Mar Mix)
Robert LissaldeとJean-Louis Fargier。ボーカルはSarah Warwick。
こちらも美しい、珠玉のボーカル曲。ボーカルものとしてもわかりやすい、一般受けしそうな曲ではあるが、そのSarah Warwickの歌声による哀愁がしっとりと響き、耳から心へと沁み込んでいく。美しい曲だが、なぜかその哀愁は失恋を思わせる。。。
12.Joke Society – Morphing Morning
こちらも父親であるJean Pierre Plissonのプロジェクト。
波の音から、怪しげな声のような音色とサイケデリックなドラムンベースへ。中盤からは落ち着いたバンド演奏が、バックミュージックとしてその景色の邪魔をせず、ムードをしっかりと作り出している。
13.Deeper & Pacific feat. Geanine Marque – Breeze
プロデュースはMadzoo。ボーカルはGeanine Marques。
爽やかなボサのリズム。Geanine Marqueのダウンな歌声とアップテンポに展開する曲調に、タイトル通りの潮の混じったそよ風を感じる。少し強めの風を全身に浴びながら傾く陽を眺める至福の時間。
14.Oleomusic – Lienzo
RaúlとAlfred Vilchesの兄弟によるプロジェクト。レーベルに属さずに、自分たちのサイトを立ち上げて曲を売り出すスタイルをとっている。
ダウンテンポなサウンドが心地よく空間に広がり、さらに遥か上空にまで響いていくような情感がある。余韻をほとんど残さないが、濃厚な時間を過ごしたその音楽たちがまだ頭の中で響いている。
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