Café del Mar 30 YEARS OF MUSIC

音楽/Music

2010年発表。記念版では珍しく2CD仕様となった。今回は特にシリーズ14あたりにクレジットされたことのある参加アーティストが集められている。突飛な変化のある構成ではないが、お馴染みの顔ぶれゆえの上質なラインナップになっている。

*本作とは別に、「Café del Mar 30th ANNIVERSARY」が存在している。そちらは、本家Café del Marが再編成のために休止状態にある時に、本家のエグゼクティヴ・プロデューサーでもある Javier del Moralがコンパイルし、REPUBLICA CAFEから発表したものとなっている。公式にはスピンオフとして扱われている。

*このページは広告を含みます/このサイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。

CD1

1.Clélia Félix – Magical Moments

フランス出身のClélia Felix。ポップ・フォークを主体としたトリップホップ、ダウンテンポをスタイルとする。シリーズでは14から17まで連続で出演している。

特徴的なスパニッシュギターの音色が、おしゃれなディープラウンジ。屋外で聴くよりも、ラグジュアリーなホテルラウンジが似合いそうな楽曲。夜景や海を一望する屋上のテラスに設られたバーでのひとときのような、贅沢な時間を堪能できるだろう。

2.Gary B – Without You

イギリス出身、Gary Frederick Butcher。精力的な活動により、本作でも別名義含めて3曲がクレジットされている。シリーズでは12から本格出演を果たし、上質なチルアウトを制作する。ボーカルは、おそらくJulie Harrington。

壮大な予感を孕んだバレアリックなビートと、落ち着いたボーカルの響きが体から余計なチカラを抜き、まるで揺蕩う波に身を任せ、重力から解放されているように感じる。

3.Deep Josh & José Rodriguez Feat. Josephine Sweett – Strangers in the Night

共にスペイン出身のJosué García BermejoとJosé Antonio Rodríguez Navarro。ボーカルのJosephine Sweett(本名María Josefa Hortelano Dolz)は、ジャズ、ハウス、ダンスミュージックのボーカルを務め、最優秀ライブボーカリストを受賞している。

ややジャジーでヒネた音を巧みに使い、沈み切ったマジックアワーから夜への変化を彩るメロディ。Josephine Sweettの少し低く響くボーカルが、更けていく夜の情景を思い起こさせる。

4.Luminous – Good to Be Out of the Rain

イギリス出身のGary Frederick Butcher。Luminous 名義ではシリーズ12、13、17に出演している。

ギターの音色から始まり、スロービートが効いた曲調。夏の暑さで陽炎が立っている海の彼方を眺めるような気分。独特なテンポに重なる、Gary Bのかわいらしいおっさんの歌声が特徴的。

5.Toni Simonen – Parasailing

フィンランド出身のToni Simonen。別名義を含めると、本アルバムに3曲がクレジットされている。

パラセイリングは、パラシュートをつけてモーターボートに引っ張られるスポーツ。だがそのスリリングなイメージとは裏腹に、上空から大洋や高山を見下ろしながら滑空しながら、自然の造形の美しさを目の当たりにしているような気分になる。

6.Cécile Bredie – Circles

オランダ出身、Cécile Bredie。大学で法律学を修め、レコード会社で弁護士に。世界を探検したいという思いから、歌手となり、現在は作詞作曲もする。シリーズ16の開幕曲で出演している。

艶やかな吐息まじりに、シタールだろうか、インド民族楽器のような旋律が哀愁を持って奏でられる。ピアノとCécile Bredieのボーカルがジャジーに被さり、民族的とは相反するような、都会的で洗練された音へ変貌している。

7.Javier Esteve – Rainbow Over Black & White

スペイン出身、Javier Esteve。ソウル、ジャズ、ボッサ、ポップと幅広いスタイルとしている。バレアレス諸島出身で、クラシックやジャズを学び、ギターやチェロでの演奏を主にしている。

緩やかなスパニッシュギターとピアノのメロディのイントロから、スペインの風がボサノヴァのリズムに乗って、心地よいリラックスを促す。Javier Esteveのボーカルがファニーで可愛らしく、幸福感で満たしてくれる。

8.Paco Fernández – Pez Volador

スペイン出身、フラメンコギター奏者のPaco Fernández。シリーズの前半からコンスタントに出演する、数少ない生き字引。

ゆったりとしたイントロから、どこか懐かしいイビサのムードが漂い、フラメンコギターの音色が優しく心を包む。冒頭から女性が「フライングフィッシュ」と言っている。タイトル『Pez Volador』の英訳がフライングフィッシュ=飛び魚のこと。飛び魚感とは・・・。

9.Digital Analog Band – Waiting 4 You

スペイン出身、Luis Sancho HijarとドラマーのPedro Andreu。トリップホップ、ダウンテンポなどとジャズ、フラメンコ、ダブと融合させた音楽を作成している。シリーズでは10から16まで、リミックスワークも含めてクレジットされている。

硬質なシンセサウンドから、繊細なギターの旋律。日没に寄り添うようなクリアなボーカルとダウンビートが響く。

10.Ive Mendes – What We Have Now

ブラジル出身、Ive Mendes。彼女は大学で音楽を学び、7年間教師をしていた。モダンソウル、スムースジャズ、ポップスをスタイルとする。イギリス在住ながら、「ブラジルのスムースジャズの女王」と呼ばれている。

独特なビートに、Ive Mendesのやや掠れたボーカルが相まって、まさにスムースなハーモニーを生み出している。サンセットから宵、夜の終わりまでをしっとりと彩ってくれる曲。

11.Bright Sun Spirit – White Sand

Clélia Félix のプロジェクト??? 情報とれず。

ダウンビートに、夜を思わせるラグジュアリーなメロディ。スパニッシュギターの切ない音色。Clélia Félixの曲っぽいといえば、確かにそう感じる。

12.La Caina – A Child Is Born

フランス出身、Jean Pierre PlissonとMaxime Plissonの親子。

Maxime Plissonのボーカルが柔らかく優しく響く、ややボサなナンバー。緩やかな曲調が穏やかな波のようで、些細な幸福でもしっかりと感じさせてくれるよう。朝にも昼にも、サンセットにも寄り添う。

13.Elmara – Central Station Ny

スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。シリーズでは14、15、16、17に登場、15では変名のプロジェクトで4曲もクレジットされている。

静かなイントロが、セピア色の光景を目に浮かばせる。繊細なピアノと特徴的なビートが懐かしさを思い起こさせる。いつも想起させる黄金色よりは、少し彩度の落ちた、振り返りたいけど戻れない過去の哀愁を想わせる。

14.Motif – Give It Away

イギリス出身のAaron Taylorとドイツ出身のThomas Lemmerによるデュオ。ボーカルはイギリス出身のHannah Brine。

Hannah Brineの透明感のある優しいボーカルと、美しいピアノメロディ。ややポップで、シネマティックな展開。砂浜に寝転び、夕陽に輝く波を全身に受けながら聴き入りたい曲。

15.Elimar & Beach Messiah – Better World

イギリス出身、Elimarとドイツ出身、Daniel Niewaldによる共作。Beach MessiahことDaniel Niewaldはイビサに20年以上在住し、サンセット・アシュラムという会場で10年以上のレジデントDJとして経験を持っている。

ファニーでどこか謎めいた曲調。甘めのボイスやサイケデリックな独特な音使いが、絡みつく見えない蔦のような幻さえ覚えさせる。

16.Coastline – Mediterranean

フィンランド出身、Toni Simonen。

海鳥の声と北欧らしい硬質なシンセが織りなすイントロが、風の強い埠頭に立っているような気にさせる。地中海の清々しさや空気感がありありと伝わり、一度見たら忘れられないサンセットを印象付けてくるようだ。

CD2

1.Lunatic Soul – Time to Remember

ポーランド出身、Marius Dudaのソロプロジェクト・・・ではないかもしれない。調べても、なぜかアーティスト名と曲名がマッチせず、DABが関連づけられる。Digital Analog Bandの変名プロジェクトかも。ライナーノーツなどがないので、確定できず。

2.Gary B – Esta Noche

イギリス出身、Gary Frederick Butcher。

静かなギターの音色で始まり、鼓動のようなビートが重なる。珍しく、ヒッピー系の民族感が強めに出ている作品。それをしっかりとバレアリックなメロディで支えている。タイトルの示す『今夜』に、さまざまな思いを巡らせ期待をしてしまう。

3.AGP Band – Bailando Con La Luna

スペイン出身、Alejandro de Pinedo(Alejandro Gil Pinedo)がプロデュースしている、バンドバージョン。

星空をモチーフにした雰囲気からは一転して、月をイメージした曲調はより輝きを増し、エロティックなボイスとサックスがやはりアダルティックなムードを演出している。バンドらしい、息づいたライブ感を味わえる。

4.Paco Fernández – Almendros Chill

スペイン出身、Paco Fernández。

Almendrosはスペインのカスティーリャ地方のことだろうか。小さな自治体で人口200人余りの小さな町ながらもその鄙びた感じの中の歴史や文化が、曲から感じられる。ゆるりとしたスパニッシュギターと、ボサを含んだリラックスした空気感。想像上の静かな町並みに癒される。

5.Digital Analog Band – I Promise

スペイン出身、Luis Sancho HijarとドラマーのPedro Andreu。

緩やかなシンセの膨らみ、ギターの控えめな旋律。ダウンビートに乗った女性のボーカルとピアノ、パーカッションの音色が、深い響きを奏でる。

6.Javier Esteve – Hungry Heart

スペイン出身、Javier Esteve。CD1にもクレジットされている。イベントに応じてサックス、トランペット奏者と組んだり、トリオやカルテット、7人編成のバンドでの活動もしている。

地中海の風を思い起こさせるスパニッシュギターの美しい音色から始まり、心を浮き立たせるボーカルが展開される。とても開放感のある曲調に歌が相まって非常に心地よく、希望や幸福感を感じさせてくれる。

7.Sol Eléctrico – Nothing

ドイツ出身、Georg GrisloffとAnika Barkowski。アンビエント、エレクトリックジャズをスタイルとする。Georg Grisloffはラインラント州立音楽大学でクラシックギターを学び、ドイツのニュージャズシーンに影響を与えた。

ややダークな雰囲気を纏う曲。電子オルガンの特徴的な音と割とポップなボーカルに、インディーな響きやエスニックサウンドがミステリアスさを醸し出している。

8.Elmara – Slow Train

スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。

電子オルガンの旋律が特徴的なイントロの後、ピアノが黄金色の情景を感じさせ、いつものFernando Marañon Sánchezの景色を見せてくれる。タイトルを思わせる、やや疾走感のあるテンポの速さ。車窓からの景色の楽しさを思わせる。

9.Ypey – Somewhere Else

フランス出身、Gregory Grimaldi。

電子的なギターとビートの効いた音に、ギターや囀りのようなアンビエントが漂う。その融合はさながら青い空と夕焼けの赤が混ざり合う景色のよう。切なく、それでいて心を揺り動かすエモーショナルさ。

10.Nerio Poggi – Season of Love

イタリア出身、ピアニストでありプロデューサーのNerio Poggi。ギターは、イタリア出身のジャズギタリストAlfredo Bochicchio。コーラスにErika Scherin。

南欧の空気感をたっぷりと持った軽快なギターをイントロに、ピアノとNerio Poggiのささやくような歌声がジャズやボサを感じさせながら、どこか静かなラグジュアリーさを持ち合わせている。春から夏を想わせる、エネルギッシュなハーモニーがある。

11.Solaris Navis – When the Sun Goes Down

フランス出身、Clélia Félixによるプロジェクト。

エスニックなパーカッションが響き、異国での旅路を思わせる。緑深い山や乾いた砂地に続く道を、沈む太陽を追いかけながら進んでいくよう。そして曲の後半に煌めいている音の山場では、まるで最果てにたどり着いたような印象も受ける。

12.Wasaby Ink – All My Love

スペイン出身のDeep Josh、Jose Rodriguez、Josephine Sweett。CD1、3曲目の別名義。

曲調はCD1収録よりも穏やかで、アンビエントな曲調にピアノが印象的に奏でられ、ボーカルのアンニュイなムードがとても心地よい。

13.Atlan Chill – Volar

スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。シリーズ

ピアノとオルガンの対比が鮮やかで、鍵盤楽器の粋を感じさせる。どこかファニーで、子どもが教会で遊んでいるような無邪気さを含み、Fernando Marañon Sánchezの作品特有の、黄金色のノスタルジックさや幸福感に溢れている。

14.Steve Xavier – One World

アメリカ出身、Steve Xavier。

イントロでは、アフリカの大地を思わせる旋律の心地よさに身を任せて聴き入ってしまう。中盤ではバックコーラスで突然日本語が聞こえる。丁寧な日本語に聞こえるが、何を言っているのだろうか。後半はトランペットを主体としたジャジーな展開となり、コーラスやパーカッションなどが様々な持ち味を表現している。

15.Toni Simonen – Endless Sea

フィンランド出身、Toni Simonen。

CD1の締めに続き、グランドフィナーレもCoastlineことToni Simonen。彼のシンセサイザーとピアノは、地中海よりもやはり北欧の海を描き出す。エメラルドグリーンの海ではなく、深い青色をした水温の低い海をこそ思わせる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました