1998年発表のシリーズ5作目。独自の色彩と個性的な楽曲が揃い、ジャケットのように一風変わった印象を与える。しかし、その楽曲構成は非常に格調高く、夕暮れのイビサを思わせるような優雅さに満ちている。
*このページは広告を含みます/このサイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。
1.A.R.Rahman – Mumbai Theme Tune
インドの著名な音楽作曲家、歌手、音楽プロデューサーのAllah Rakha Rahman。
重厚な低音と笛の音、まるで映画のような・・・というのも当然で、その名の通り映画『Bombay』のテーマ曲。これはイスラム教徒の女性とヒンズー教徒の男性の恋愛を描いた作品で、国によっては上映禁止になっている。旋律には深い悲しみが込められており、アルバムの幕開けにふさわしい、荘厳な美しさを湛えた一曲。
2.Levitaion – More Than Ever People
シリーズ4から続いての出演である ドイツ出身のIngmar Hänsch、Marcell Meyer、Chris GilcherによるLevitation。ボーカルはCathy Battistessa。この曲はJosé Padillaによりほぼ毎晩日没時に流され、大人気となった。
水中の泡を感じながら、これは浮かんでいるのか沈んでいるのか。最初は単調なドラムにギターが絡み、Cathyが静かに、しかし情熱的に歌い出す。柔らかくも夕景と完璧に調和する間奏。気持ちのいい音の波の余韻に浸れる。シリーズ4の『out of time』とは全く違うテイストが、味わいを深くしている。
3.Jelly & Fish – Appreciation (Radio Mix)
ドイツ出身のマーセル・マイヤー(DJ Sweep)とクリス・ギルヒャー(Doc Floyd)、つまり前出のLevitationの2人によるサイドプロジェクト。ボーカルはTina Welzel。
Tina Welzelの歌いあげる歌詞には”感謝”の意味があるが、それは当たり前にあるものへの感謝なのか、もしかしたら失ったものに対する感謝なのかもしれない。ダウンテンポな曲調であり、少し物悲しい感じもある。しかしその中のエレクトロなサウンドが、変わり行くイビサの文化を示しているようにも思える。よほどJosé Padillaが彼らを気に入ったのか、もちろんその理由も分かるほどに上質で、この並びでこその繋がりがアルバムの完成度を高めている。
4.Nookie Featuring Larry Heard – Paradise (Tease Mix)
イギリス出身のNookie(Gavin Cheung)とアメリカ出身のLarry Heardのコラボ。Nookieはドラムンベース、Larry Heardがディープハウスの要素を持ち、リラックスしたビートとメロディアスなサウンドが特徴。
Larry Heardの影響が色濃く反映された、波のように流れるシンセサイザーと緩めのダウンテンポが心地良い。カフェの白いベンチに座り、爽やかな風を感じながらそのサウンドを楽しむ感覚を味わえる。
5. 4 Wings – Penelope(Radio Edit)
イタリア出身のArmando MaggioranaとSebastiano Maggioranaのプロジェクト。
陽が沈んだ後の夕景に響くサックスフォン。そこへ少し重めのダウンテンポが夜の扉を開け、レゲエボイスやバイオリンなど様々な音が絡み合う。気がつけば辺りは暗いが、観客の顔は皆満足そうに明るい。
6.Ame Strong – Tout Est Bleu (Original Ame Strong S.A. Remix)
フランス出身のAme StrongはPascale HospitalとAndy Shafteのエレクトロポップをスタイルとする二人組。ボーカルを担当したPascale Hospitalは’05年に45歳(46歳?)という若さで亡くなってしまっている。『Tout Est Bleu』フランス語のタイトルで、「すべてが青い」という意味。
さすがフランスとでもいうべきかエレガントな雰囲気を持ち、Pascale Hospitalの歌い方にも英語とは違う艶かしさがある。それをポップ(泡)のようなサウンドで可愛らしく、また明るく彩っている。
7.The Ballistic Brothers – Uschi’s Groove
イギリスのエレクトロニックグループ。X-Press 2としても知られるDrren RockとDarren House、それにAshley BeedleとDavid Hill、Uschi Classenによるもの。ジャズやブレイクビーツ、ハウス、ファンクといったサウンドスタイルを持つ。
良い意味で耳に残らない、完全なバックグラウンドミュージックであり、ジャズやファンクのしっとりした雰囲気が自己主張することなくそこに存在している。
8.A New Funky Generation Featuring Marika – Lubumba ’98
A New Funky Generationはイギリス出身。Breeze、Dee Rowe 、Gee Whelbourn、John Frost、Pete Yeadon、Richard Frost、Steve Bennett、Steve Bulterからなるジャズユニット。ボーカルにイギリス出身のMarika Ling。
毛並みのだいぶ変わった音楽。陽気なボサノヴァが基調になりながら、スペインらしいフラメンコギターが曲に合わせて優しく響き、トランペットや特徴的な歌声も相まって、その陽気さに当てられたら、座って聴いてはいられなくなる。
9.Les Negresses Vertes – Face a La Mer (Massive Attack Remix – full version)
フランス出身のバンド、Helno(Noël rota)(ボーカル)、Matias Canavese(アコーディオン)、Stephane mellino(ギター)、Jean-Marie Paulus(ベース)、Gaby(Gabriel Sanchez)(ドラム)、Iza Mellino(バックボーカル)、Jo Roz(Joseph Guigui)(トランペット)、Michel Ochowiak(トランペット)によるもの。ロック、パンク、ワールドミュージックをスタイルとする。グループの名前のLes Negresses Vertesはフランス語で「緑の黒人女性」で、グループの最初のコンサートで浴びせられた罵倒だという。
フラメンコギターやパーカッションが陽気に響き、そしてMassive Attackらしいややダウンなリズム。トリップホップの持つスモーキーな雰囲気を曲に融合させ、適度にチルさせてくれる。タイトルの『Face a La Mer』は「海に向かって」という意味だという。
10.Electribe 101 – Talking With Myself ’98 (Canny Remix)
イギリス出身のBillie Ray Martin (ボーカル)、Joe Stevens、Les Fleming、Roberto Cimarosti、Brian Nordhoffによるグループ。1988年から1992年まで、ブルージーでソウルフル・ハウスな演奏で活躍した。この『Talking With Myself 』が最大のヒット曲となり、Cannyのリミックスバージョンはバレアリック・クラシックとなった。リミックスを担当したCannyはイギリス出身のLaurence Nelson、 Alastair JohsonとNick Carterのトリオ。Nick Carterはシリーズ3でEighth Waveとして参加している。
原曲ももちろんいいのだが、このCanny Remixが複雑な音の構成で、それぞれの音は弱々しいほどに繊細で、相俟ったボーカルが薄いガラスのよう。だがそのいくつもの音の層によって重厚感をもたらし、非常に美麗で深みのある曲に仕上げられている。
11.Cyberfit – Pojo Pojo
Cyberfitはオランダ・アムステルダムを拠点とするMiro TeševićとZorko Opačićの2人組。ダウンテンポ、エレクトリックベースをスタイルとする。
ダウンテンポにのって「ほゆ~ほゆ~」と軽妙に歌いあげる、コミカルでダークファニーな曲。集中して聴くような感じではなく、バックグラウンドミュージックにちょうど良い。
12.Lamb – Transfatty Acid (Kruder & Dorfmeister Remix Edit)
Lambはイギリス・マンチェスターを拠点とするLouise RhodesとAndrew Barlowによるバンド。トリップホップやブリストル系、生のパーカッションを多用するスタイルを持つ。リミックスを担当したKruder & Dorfmeisterはオーストリア出身のPeter KruderとRichard Dorfmeister。Lambに近しいトリップホップを主体としている。
雨の中で見つけたパブに入ると、スモーキーな空間で始まるライブ。店内はすでに満員。ルイーズのアンニュイな声と、重くまとわりつくドラムが心臓を打つ。1曲だけの滞在、しかし心は充分満たされている。
13.Salt Tank – Angels Landing (José Padilla & Sunchild Remix)
シリーズ2で登場したSalt Tank(David GatesとMalcolm Stanners)の曲をJosé PadillaとSunchildがリミックス、Paco Fernándezがギターで参加している。
Paco Fernándezの、スペインらしいヒッピー文化を彷彿とさせるギターをはじめとする旋律が力強くも物悲しく、ボーカルのGeri Blamの掠れ声と合わさり透明感のある一曲になって、真夏のイビサの海に響き渡るようだ。
14.Paco Fernandez – Mani
前曲の続きから、スペイン・グラナダ出身のフラメンコミュージシャンPaco Fernández。地中海フラメンコを基盤に、アラビア音楽やカリブ音楽の要素を取り入れた独自のスタイルを持つ。
基本的には陽気な雰囲気を持ちながら、どことなく物悲しい一面がある気がする。情熱とは時に激しく、時に熾火のように静かに滾るものなのだろう。
15.Wim Mertens – Close Cover
ベルギー出身の現代音楽作曲家。1987年に発表された。反復音楽と呼ばれる、同じメロディを繰り返し奏でるミニマルミュージックの特徴を持つ。国営ラジオにて毎夜3-4回流され、魅力に取り憑かれた者も多いという。
誰しもが聴いたことのある、正統なクラシック曲。電子音が表立つミックスではないが、それは不要だろう。クラシカルなピアノの中に、喜びも悲しみも寂しさも同居しており、アルバムの最後に置くことで、余韻を心地よく感じることができる。このシリーズ5のアルバムは、少し切ないハッピーエンドだ。
PR
コメント