シリーズ6作目。このアルバムを以てJosé PadillaはCafé del MarレジデントDJ から離れる。その理由は「あまりに有名になりすぎたから」。この言葉がどういう意味だったのか知るのは難しいだろうが、Café del Marにとっての一つの大きな転機となったことに変わりはないだろう。選曲や構成はより磨かれ、José Padillaの深い世界観を垣間見れるアルバムとなっている。
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1.Talvin Singh – Traveller (Kid Loco’s Once Upon A Time In The East Mix)
タルヴィン・シンはイギリス出身のタブラ奏者。タブラは太鼓のようなもの。インドの古典音楽を学び、ドラムンベースと融合させたスタイル。また、ミックスを担当したKid Locoはフランスのエレクトロミュージシャンのジャン=イヴ・プリュール(Jean-Yves Prieur)。
原曲はまさしくインド音楽×ドラムンベース。そこにKid Locoのミックスにより、シリーズ6を代表するような印象的な開幕曲となっている。原曲の叙情的な魅力を残しながらも、イビサの壮大な自然や歴史的遺跡に誘われるような、深い世界に入り込む感覚を与えてくれる。
2.Afterlife – Dub In Ya Mind (Beach Club Mix)
イギリス出身のSteven Millerによるプロジェクト。シリーズ3、4に引き続き常連となっている。ボーカルはRachel Lloyd。
今作は非常にバレアリックでイビサにぴったりな、ゆったりとした曲。雷鳴のような音から始まり、その後に広がる澄んだ青空のような、穏やかなラテン音楽のエッセンスが緩やかに混ざり合い、ビーチで過ごす何気ないひとときをより一層美しいものにしてくれる。
3.A New Funky Generation – The Messenger
イギリス出身、シリーズ5から再登場のBreeze、Dee Rowe 、Gee Whelbourn、John Frost、Pete Yeadon、Richard Frost、Steve Bennett、Steve Bulterからなるジャズユニット。
ピアノとコーラスが美しく心に響き、どこか讃美歌を思わせる一曲。そしてビートが曲のテンションを高めながらも、ジャズ特有の落ち着いた雰囲気を保ち、情感を損なうことなく聴く者をトリップさせてくれる。イントロにライブ感のある演出がなされており、これをライブで聴けたなら実に幸せだろう。
4.dZhihan & Kamien – Homebase
オーストリアを拠点とし、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のVlado Dzihanとドイツ出身のMario Kamienの2人によるもの。ジャズ、ラテン、エレクトロニカ要素を融合させたサウンドが特徴。
数多あるチルアウトの中でも、極めて洗練された美しい旋律を奏でている。ジャジーでスモーキー、ドラマチックな展開が聴く者に深い感動を与えるだろう。他アーティストによる多くのリミックスがあるが、やはりこのオリジナル版が持つ叙情性と深みは他に代えがたいものがある。
5.Mandalay – Beautiful (7” Canny Mix)
Mandalayはイギリス出身のデュオ、Saul Freemanとボーカルを務めるNicola Hitchcockによるプロジェクト。トリップホップを中心に制作。2002年に個人的・職業的な理由で解散しているが、個別でも活躍を遂げている。マドンナに、お気に入りの一つと公言された。ミックスを担当したCanny(Laurence Nelson、 Alastair JohsonとNick Carter)は、シリーズ5ではElectribe 101のリミックスを担当している。
Café del marシリーズ中でもあまりに美しすぎる曲。言葉にできない。2000年にIbizarreによる記念リミックス、2003年にサラ・ブライトマンにカバーされているが、収録されているこのCannyによるこのミックスバージョンは、その透明感と純粋さをさらに強調し、最も完成度が高いだろう。
6.Humate – 3.2 Bedrock (Ambient Mix)
ドイツ出身Gerret Frerichs(元メンバーにOliver HuntemannとHans-Georg Schmidt) によるプロジェクト。それをBedrock名義で活躍するJohn Digweed & Nick Muirによるアンビエントミックスとなっている。どちらもプログレッシブハウスやトランスをスタイルとしている。
プログレッシブ感が強調された作品であり、かなり機械的で構築的な音楽スタイル。およそチルアウトと呼べるのか非常に迷うが、気持ちを浮上させていく意味合いでも良い構成となっている。この懐の深さが、café del marのチルアウトというジャンルの幅を広げているのだ。
*クレジットされている表記はCDのジャッケット通りにしている。なので、なぜかBedrockがはみ出している。その後のEssentials(Collection)ではちゃんと(Bedrock Ambient Mix)となっている。
7.Endorphin – Satie 1
フランス生まれのEric Chaps。放送局主催のコンテストで優勝し、頭角を表す。ライブや映画・テレビなどのサウンドクリエーターとして活躍。また、チルエレクトロニカの巨匠で、美しいピアノ曲が印象的な「Ambient Chill」シリーズを出している。
ややアップビートでエレクトロニックなクラシックになっている。落ち込みすぎない編曲で、ビーチで聴くならちょうど良さそう。しかし、なんでサティなんだろう・・・。café del marの(をはじめ?)サティに対するリスペクトを大いに感じる。
8.Nitin Sawhney – Homelands
イギリス出身、エレクトロやニュージャズ、トリップホップ、R&Bなどをスタイルとする。両親ががイギリス系インド人であり、幼少からピアノ、クラシックギター、フラメンコギター、シタール、タブラを学んだ。
ギターやタブラの調べに、ボーカルのRizwan Muazamが曲に魂を込め、その豊かな叙情を余すことなく表現している、素晴らしい曲。多文化的な音楽要素が、聴く者に広がる風景を思い起こさせ、郷愁や新たな冒険心を同時に呼び起こすような感覚を与えてくる。
9.Rae & Christian – A Distant Invitation
イギリス・マンチェスター出身のMark RaeとSteve Christianの2人。エレクトロニック、トリップホップをスタイルとする。ボーカルはSiron。
ヒップホップリズムのドラムに、ジャジーでややスモーキーさを感じる曲。Sironの情熱的な歌声が、夜のフェスティバルのような印象を与え、辺りでは観客が腰を振って踊る姿をも想像させる。
10.Bugge Wesseltoft – Existence (Edit)
ノルウェー出身のピアノジャズミュージシャンJens Christian Bugge Wesseltoft。1983年に19歳でプロとして活躍、1996年ごろから電子音楽を取り入れ、ヒップホップやテクノ・ダンスシーンでも支持されている。
ジャジーなピアノ、シンセサイザーと複雑に絡み合うダウンテンポな曲調。惹きつけてやまないダークな雰囲気を纏いながら、パーカッションやドラムが静かに、かつ力強く曲を脈動させ、これは生きている音楽なのだと思わせる。
11.Paco Fernandez / Levitation feat.Cathy Battistessa. – Oh Home
シリーズ4、5から三度目の登場、スペイン・グラナダ出身のフラメンコミュージシャンのPaco FernandezとLevitation、そして歌姫Cathy Battistessa。café del marに欠かせない存在となった3組の共作。
3組の良いところがしっかりと融合されている。Paco Fernandezの哀愁あるフラメンコギターとLevitationの情感たっぷりな曲調と、それを引っ張っていくCathy Battistessaのソウルフルだが切ない歌声。それらが見事に調和している。陽が沈む瞬間に聴いていたい曲。
12.Marc Collin – Les Kid Nappeurs Main Theme
フランス出身の映画音楽家。映画『誘拐犯』のメインテーマである曲。
印象的な口笛で始まり、その曲の展開はまさにシネマティックであり、ハラハラドキドキさせるものではある。これもチルアウト・・・なんだろうな。Café del Marの音楽の多様性を物語る曲。
13.Jose Padilla – Adios Ayer
José Padillaの名曲中の名曲。これはJosé PadillaがCafé del Marへの別れとしてリリースした曲と言われている。収録されている歌い手はSteve Bennetで、爽やかに歌い上げている。別バージョンでSEALがソウルフルに歌っているものもある。他にも多種多様にミックスされているが、この曲においてオリジナルを超えるものはないだろう。
リズムとメロディーの軽やかさ、ピアノやSteve Bennetの優しく柔らかいボーカルが曲という器いっぱいに溢れている。José PadillaがCafé del Marを愛していたことは疑いようがないと確信させ、寂しさもあるが、それ以上に幸福を感じさせてくれる名曲である。
14.Moonrock – I’ll Street Bleus
オーストラリア出身のKatalyst(Ashley Anderson)と Michael Wrightによるプロジェクト。ヒップホップ、ソウルをスタイルとする。
ヒップホップとジャズを融合させ、トランペットやピアノが絡み合い、暗いホールに控えめに照らされたステージで、ドライかつクールに演奏している様子を想像させる。大人の魅力が漂う一曲。
15.Dusty Springfield – the Look Of Love
イギリスの著名な歌手であるDusty Springfield(本名Mary Isobel Catherine Bernadette O’Brien)。この曲は元々バート・バカラックとハル・デヴィッドが作曲し、Dusty Springfieldによって広められ、現在では数え切れないほどにカバーされている。
官能的でゆったりとしたジャジーなボサノヴァ、これが非常に心地よく、コンパイルしたJosé Padillaが惚れ込んでアルバムの最後に配置したことからも、「チルアウトとは」という概念に対する彼にとっての答え的な曲であると言えるのでは。José Padilla自身の『Navigater』のアルバムにも収録されていることがリスペクトの表れであり、彼にとっても締めくくりに相応しい曲だと信じているのだろう。
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