2003年発表、初のベスト盤。監修をまさかのJosé Padillaが行っている。内容たっぷりの2CD仕様となっているが、当然ベスト盤なので過去作品からのクレジット。ただ、初収録作品も盛り込まれている(CD1のLamb、Coldplay。CD2のZuell、José Padilla、U2)。
*過去収録曲は同じコメントです。
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CD1
1.Paco de Lucia – Entre dos Aguas
volumen dos(2)より。
スペイン出身、世界的に有名な天才フラメンコギタリスト、Paco De Lucia。2014年に彼は亡くなったが、なんと2024年の2月にパコ11歳・兄のぺぺ13歳頃の未発表曲が見つかったという。
スペインの熱い血がたぎるかの如く、そのギターの音色と旋律には耳を奪われることだろう。まさしくスペインが情熱の国であることの証明だ。
2.Karen Ramirez – Troubled girl (Spanish version)
volumen cuatro(4)より。
イギリスのダンスミュージック歌手Karen Ramirez。3曲目のIndo-Aminataに関わったSouled Outがプロデュースしている。
この曲には英語バージョンも存在し、言語の違いによっても印象が大きく異なる。スペイン語バージョンでの彼女のソウルフルな歌声と、スパニッシュギターの音色が強いアクセントとなっている。民族的で情熱的なサウンドは、3曲目のIndo-Aminataと同様の雰囲気を醸し出しており、アルバムの統一感を引き立てている。
3.Ben Onono – Tatouage bleu (Avec chet)
volumen ocho(8)より。
イギリスとナイジェリアの血を引くミュージシャン、Benjamin Onono Arinze。ロンドンの王立音楽アカデミー奨学生においてピアニストとして訓練を積んだ。
艶かしいフランス語による歌とダウンビートが、寝そべって聴くにもちょうど良い。「青いタトゥー」は結ぶ相手を想う歌のようだが、その腕枕にいる相手はそこにいるのだろうか。情熱的な盛り上がりに反して、すごく儚い曲のように聴こえる。
4.Mari Boine – Gula gula (Chilluminati Mix)
volumen ocho(8)より。
ノルウェー出身のMari Boineは、北ヨーロッパの先住民族であるサーミの伝統的なジョイク(joik:個人や場所や動物を表現する歌唱法)とロック、ジャズ、エレクトロニカを融合させた音楽スタイルを持ち、彼女の活動はサーミ人としての文化を誇りに、愛、人間の脆弱性、不正義、闘争、誇りと尊厳など深いテーマを歌詞に込めている。リミックスを担当したChillminatiは、ノルウェー出身のNicholas SillitoeとPer Martinsenのコンビ。
民族性のある曲がcafé del marに非常によく合っている。原曲のメッセージ性こそトーンダウンされているが、リミックスの重めのキックとダウンテンポなリズムによって、まるでマジックアワーから徐々に暗くなり、夜になっていく様を感じられる。
5.Lux – Northern lights
volumen siete(7)より。
Afterlifeとしても活躍するSteve MillerとJames Brightのプロジェクト。
ほんのりと冷ややかさがありながら、しかし優しく深いバイオリンの音色と重厚なキックが心地よい漂流感を与えてくれる。耳にこびりつくような曲ではないので、飽きがこない。1曲目からチルアウトの真髄を味わわせてくれる。極夜の中、輝くオーロラを眺めているよう。そこはトロムソかラップランドか・・・。
6.José Padilla – Adios ayer
volumen seis(6)より。
スペイン出身、José Padillaの名曲中の名曲。これはJosé PadillaがCafé del Marへの別れとしてリリースした曲と言われている。収録されている歌い手はSteve Bennetで、爽やかに歌い上げている。別バージョンでSEALがソウルフルに歌っているものもある。他にも多種多様にミックスされているが、この曲においてオリジナルを超えるものはないだろう。
リズムとメロディーの軽やかさ、ピアノやSteve Bennetの優しく柔らかいボーカルが曲という器いっぱいに溢れている。José PadillaがCafé del Marを愛していたことは疑いようがないと確信させ、寂しさもあるが、それ以上に幸福を感じさせてくれる名曲である。
7.Lamb – Angelica
初収録。
イギリス出身のLouise RhodesとAndrew Barlow。café del marシリーズには2曲クレジットされている。トリップホップやブリストル系、生のパーカッションを多用するスタイルを持つ。今作はフランスのClaude Debussyのベルガマスク組曲の『月の光』をサンプリングしている。
Lambの『Gabriel』や『Trans fatty acid』と比べると、やや明るめの曲。サンプリングしたクラシカルなピアノに、ノイジーな効果が掛け合わされ、その寂寥感や透明感が返って強調されている。賑やかな街中からサンセットを臨んでいるような、救いのある作品。
8.The Sabres of Paradise – Smokebelch II (Beatless mix)
volumen uno(1)より。
イギリス出身の音楽ユニット、Sabres Of ParadiseはAndrew Weatherall、Jagz Kooner、Gary Burnsによって結成されたが、現在は解散している。
可愛らしい旋律と、ピーン・ピョーンという跳ねるような音が印象的で、気だるい夏の真昼のプールサイドや波打ち際で遊ぶ光景を思い起こさせる。ビートレスというタイトルだが、中盤からは楽しいイベントが始まりそうな予感さえ感じさせる。
9.Phil Mison – Lula
volumen cuatro(4)より。
イギリス・ロンドン出身で、バレアリックやアンビエントといったスタイルを持つPhillip William John Mison。Cantomaとしての活動もしている。José Padillaなどの影響を受け、偶然の出会いからcafé del marで2年間DJをしていた。
静かな出だしから始まり、鼓動を思わせる重めのキックが響く。叙情的な雰囲気が豊かなピアノの旋律とシンセサイザーの妙味が、ゆっくりと体を解きほぐしていく。
10.Coldplay– God put a smile upon your face(Def Inc. remix)
初収録。
イギリス出身のロックバンド、Chris Martin、Jonny Buckland、Guy Berryman、Will Championの4人。あまりにも有名なポピュラー音楽界のスター。リミックスを担当したDefinition Incorporated はLarry Holcombe と Mark Kaneによるプロジェクト。ドラムンベースや独特のサンプリング、スクラッチをスタイルとする。
ミックスによりダークで退廃的な雰囲気に。またボーカルのエコーがダウンで奥深さを醸し出している。陽が落ち、辺りが暗くなってもビーチから腰を動かせない強い引力を感じさせる。
11.Moonrock – Ill street blues
volumen seis(6)より。
オーストラリア出身のKatalyst(Ashley Anderson)と Michael Wrightによるプロジェクト。ヒップホップ、ソウルをスタイルとする。
ヒップホップとジャズを融合させ、トランペットやピアノが絡み合い、暗いホールに控えめに照らされたステージで、ドライかつクールに演奏している様子を想像させる。大人の魅力が漂う一曲。
12.The Ballistic Brothers – Uschi’s groove
volumen cinco(5)より。
イギリスのエレクトロニックグループ。X-Press 2としても知られるDrren RockとDarren House、それにAshley BeedleとDavid Hill、Uschi Classenによるもの。ジャズやブレイクビーツ、ハウス、ファンクといったサウンドスタイルを持つ。
良い意味で耳に残らない、完全なバックグラウンドミュージックであり、ジャズやファンクのしっとりした雰囲気が自己主張することなくそこに存在している。
13.A New Funky Generation – The messenger
volumen seis(6)より。
イギリス出身、シリーズ5から再登場のBreeze、Dee Rowe 、Gee Whelbourn、John Frost、Pete Yeadon、Richard Frost、Steve Bennett、Steve Bulterからなるジャズユニット。
ピアノとコーラスが美しく心に響き、どこか讃美歌を思わせる一曲。そしてビートが曲のテンションを高めながらも、ジャズ特有の落ち着いた雰囲気を保ち、情感を損なうことなく聴く者をトリップさせてくれる。イントロにライブ感のある演出がなされており、これをライブで聴けたなら実に幸せだろう。
CD2
1.The Penguin Café Orchestra – Music for a found harmonium
volumen uno(1)より。
イギリス出身のギタリスト、Simon Jeffesを中心に結成されたグループ。Simon Jeffesが1997年に亡くなった後、2009年から息子のArthur Jeffesが中心となり「ペンギン・カフェ」を結成。
民族音楽の影響が色濃く、山岳地帯の音楽のような雰囲気を持ちながらも、小さな村のお祭りのような和やかな楽しさがある。どこで流れても人々を幸せにする楽曲だ。
2.Les Negresses Vertes – Face a la mer (Massive Attack remix full version)
volumen cinco(5)より。
Stephane mellino(ギター)、Jean-Marie Paulus(ベース)、Gaby(Gabriel Sanchez)(ドラム)、Iza Mellino(バックボーカル)、Jo Roz(Joseph Guigui)(トランペット)、Michel Ochowiak(トランペット)によるもの。ロック、パンク、ワールドミュージックをスタイルとする。グループの名前のLes Negresses Vertesはフランス語で「緑の黒人女性」で、グループの最初のコンサートで浴びせられた罵倒だという。
フラメンコギターやパーカッションが陽気に響き、そしてMassive Attackらしいややダウンなリズム。トリップホップの持つスモーキーな雰囲気を曲に融合させ、適度にチルさせてくれる。タイトルの『Face a La Mer』は「海に向かって」という意味だという。
3.Zuell – Olas de sal
初収録。
スペイン出身のJesús Martínez、Carlos Guinart、Estéve Puigの3人。ブレイクビーツやダウンテンポをスタイルとする。
インド系ミュージックとスパニッシュが交差したり、融合したりといったように、フラメンコチックの中に悠久を思わせるインディーな雰囲気が変幻自在に奏でられる。その両者が波のように大きく、あるいは小さく、静かだったうねりがダイナミックな流れとなりコントラストを鮮やかに描き出している。
4.A. R. Rahman – Mumbai theme tune
volumen cinco(5)より。
インドの著名な音楽作曲家、歌手、音楽プロデューサーのAllah Rakha Rahman。
重厚な低音と笛の音、まるで映画のような・・・というのも当然で、その名の通り映画『Bombay』のテーマ曲。これはイスラム教徒の女性とヒンズー教徒の男性の恋愛を描いた作品で、国によっては上映禁止になっている。旋律には深い悲しみが込められており、アルバムの幕開けにふさわしい、荘厳な美しさを湛えた一曲。
5.A Man Called Adam – Easter song
volumen dos(2)より。
イギリス出身Sally Rodgers(サリー・ロジャーズ)とSteve Jones(スティーヴ・ジョーンズ)のAMCAが再登場。ジャズ・フルート奏者Eddie Parkerを迎えている。
雰囲気は前作に似て、非常にメロディアスで、イビサの豊かな時間を存分に表現している。ジャジーなフルートが可愛らしさとライブ感を演出している。
6.John Martyn – Sunshine’s better (Talvin Singh remix)
volumen cuatro(4)より。
イギリス出身のブルース・フォークギタリストであるJohn Martyn(本名Iain David McGeachy、’09年にアイルランドで亡くなっている)。イギリス出身のTalvin Singhによるリミックス。
John Martynによる優しい歌声と、Talvin Singhの施す民族音楽を彷彿とさせるミックスが見事にマッチして、まるで日没の海辺を彩る一枚の絵のよう。この曲を聴きながらオレンジ色に輝く海を見ていたなら、静かで穏やかな幸福感が漂い、日常の喧騒を忘れさせてくれることだろう。
7.José Padilla – Come back
初収録。
スペイン出身であり、Café del Marの立役者José Padilla。
’99年に離れたのち、監修を任されたことに対する『Come back』だろうか? このベスト盤は、José Padillaがコンパイルしていないシリーズ7以降の曲もふんだんに入っている。それは自らの色で染めることが大事なのではなく、Café del Marという一つの生命体を育て上げてきた自負のようでもある。曲調は古き良き一つの時代を思わせる、ように感じてしまう。緩やかなビートが織りなすメロディが心地よく、砂浜に腰を落ち着け爽やかな風を受けて聴くにはピッタリだろう。
8.U2– In a little while(N.O.W remix)
初収録。
アイルランド出身のロックバンド、Bono、The Edge、Adam Clayton、Larry Mullen Jrの4人組。超有名なグループ。リミックスはNightmares On Wax。
Bonoのスウィートな歌声はそのままに、N.O.W.のトリップホップが鈍色の光を放っている。陽が落ちた後もまだパーティーは続く。まだ少し暑い気温でも、音楽と共に仲間同士でビールのジョッキを傾けていれば、時間を忘れてしまうひとときを味わえるだろう。
9.Moby – Whispering wind
volumen siete(7)より。
アメリカのミュージシャン、本名リチャード・メルヴィル・ホール。エレクトロニカやアンビエント、トリップホップ、オルタナティブロックなどをスタイルとしている。どのCDでも特徴的な坊主頭のイケオジ。厳格な菜食主義者で、動物愛護活動家、ドラッグを摂取しないことでも知られる。好きな映画監督は北野武。そしてなんと、曽々おじは『白鯨』を書いたハーマン・メルヴィルであり、彼のMobyはそのクジラの名前に因んでいるという。
スモーキーでダウンなビートに、囁くようなボーカルが絡み合い、繊細なムードが広がる。彼の作る音楽のジャンルは多岐に渡り、Mobyと言うジャンルがあるのではとさえ思わせられる。また多種ある彼の曲の中でも、シリーズ7にぴったり合う選曲をしたBrunoもさすがと言うべきか。
10.UKO – Sunbeams
volumen siete(7)より。
オーストリア出身のJürgen Nussbaum & Martin Nussbaumの兄弟。ファンクやダブ、エレクトロニックソウルをスタイルとする。Gato Barbieriの『Gods And Astronaughts(Errare Humanum Est)』をサンプリング。本家も甘めのジャズ。
流れを壊さないまま、しっかりと重いリズムに「らららら〜」と甘ったるくさえ感じる男性の歌声が意識をトリップさせ、その心地良さに、そのままビーチで昼寝してしまいそうになる。
11.Lamb – Trans fatty acid (Kruder & Dorfmeister remix edit)
volumen cinco(5)より。
Lambはイギリス・マンチェスターを拠点とするLouise RhodesとAndrew Barlowによるバンド。トリップホップやブリストル系、生のパーカッションを多用するスタイルを持つ。リミックスを担当したKruder & Dorfmeisterはオーストリア出身のPeter KruderとRichard Dorfmeister。Lambに近しいトリップホップを主体としている。
雨の中で見つけたパブに入ると、スモーキーな空間で始まるライブ。店内はすでに満員。ルイーズのアンニュイな声と、重くまとわりつくドラムが心臓を打つ。1曲だけの滞在、しかし心は充分満たされている。
12.Bush – Letting the cables sleep (N.O.W Remix)
volumen siete(7)より。
Bushはイギリスのロックバンド。当時のメンバーはGavin Rossdale、Nigel Pulsford、Dave Parsons、Robin Goodridge。リミックスはNightmares On Wax。
原曲も甘美だが、それをトリップホップの雄N.O.Wがリミックス。決して華美にせず、原曲の良さをしっかりと活かし、よりムーディーに仕上げている。Gavinの英語がとても聞き取りやすく、そして感情豊かな歌が心身に沁み渡って来るようだ。
13.Nookie – Paradise(Tease mix)
volumen cinco(5)より。
イギリス出身のNookie(Gavin Cheung)とアメリカ出身のLarry Heardのコラボ。Nookieはドラムンベース、Larry Heardがディープハウスの要素を持ち、リラックスしたビートとメロディアスなサウンドが特徴。
Larry Heardの影響が色濃く反映された、波のように流れるシンセサイザーと緩めのダウンテンポが心地良い。カフェの白いベンチに座り、爽やかな風を感じながらそのサウンドを楽しむ感覚を味わえる。
14.Electribe 101 – Talking with myself(’98 Canny remix)
volumen cinco(5)より。
イギリス出身のBillie Ray Martin (ボーカル)、Joe Stevens、Les Fleming、Roberto Cimarosti、Brian Nordhoffによるグループ。1988年から1992年まで、ブルージーでソウルフル・ハウスな演奏で活躍した。この『Talking With Myself 』が最大のヒット曲となり、Cannyのリミックスバージョンはバレアリック・クラシックとなった。リミックスを担当したCannyはイギリス出身のLaurence Nelson、 Alastair JohsonとNick Carterのトリオ。Nick Carterはシリーズ3でEighth Waveとして参加している。
原曲ももちろんいいのだが、このCanny Remixが複雑な音の構成で、それぞれの音は弱々しいほどに繊細で、相俟ったボーカルが薄いガラスのよう。だがそのいくつもの音の層によって重厚感をもたらし、非常に美麗で深みのある曲に仕上げられている。
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