Café del Mar13 (VOLUMEN TRECE)

音楽/Music

2006年発表。真っ白なジャケットにXⅢを表す文字の中に、Café del Marの店内と夕陽が見える。お馴染みとなった2CD仕様。サンセットを意識した構成になっており、どれもが秀逸な出来栄えだが、意外性を持つ曲は少なくなった。サンセットにはサックスとスパニッシュギター、情熱的な歌。。。

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CD1

1.STEEN THØTTRUP feat. ANNETTE BERG – HEADING FOR THE SUNRISE

デンマーク出身のプロデューサー、Steen Thøttrup。シリーズ12でもコンビを組んだAnnette Bergがボーカルと務めている。

Annette Bergのややハスキーな声質が、ヤスリのように感情を撫で上げる。冷たい感じすらあるボーカルやピアノ、シンセサイザーの曲調が、どちらかといえば夕陽が落ちる闇に向かっていくような印象を与える。一日が終わり、水平線から光が消えてく様を思い浮かべてしまう。開幕曲に相応しいかな?

2.ONE MIND’S EYE feat. ELSIEANNE – SHIVA

カナダ出身Antonio MarsilloとJoe Pacheco。ボーカルにElsieanne Caplette。

タイトルのシヴァはヒンディー教における創造と破壊の神。ややインディーな響きに、甘いボーカルが調和している。悲哀とファニーさを持ち合わせた曲の表現が、そのシヴァの二面性のように異国情緒感をたっぷりに奏でている。

3.KITTY THE BILL – MISTER MISTA

ドイツ出身のKatrin Stoffel。Maxim IllionとClub des Belugasというニュージャズ・ラウンジプロジェクトの中核を担う。

少しダークで、ほろ苦とほろ甘が入り乱れる旋律。ジャジーなアップビートと切ないシンセが、まるで黄昏と同じ色をする赤ワインのような暗い情熱を宿している。相反しそうな雰囲気を持ちながら、決して気分は悪くない。そしてアダルトな渋い曲だ。

4.GARY B – SET ME FREE

シリーズ12にLUMINOUS名義で登場した、イギリス出身のGary Butcher。

落ち着いたイントロから、Gary B自身のボーカル。ギター、歌手と多才ぶりを発揮し、その曲には独特の温かみや優しさを感じる。日没から、夕闇への変化を表すような変化を表現している。夜へと変貌を遂げることでイビサは本当の姿を晒し、自由に振る舞うのかもしれない。

5.ELENAH – COSITAS DE LA VIDA

スペイン出身歌手であるElenahとGary Bのプロジェクト。Elenahはフラメンコ、ジャズをスタイルとしている。

哀愁のあるフラメンコ調のギターとElenahによるスパニッシュボーカルが熱を帯びたオーラを纏う。地中海のサンセットを感じさせ、逆光の中を踊る影を見つめていると、自身の中にも熱が湧き上がるのを感じる。その熱が、囚われていた小さな何かを払拭してくれる。

6.RITMO INTACTO – INDÍGENA

オランダ出身のJeroen VerhaegとパーカッショニストのPaul Van den Broek。サックスをAlbert van Doornが担当。

サックスやパーカッション、笛の音が奏でる民族音楽的でジャジーなセッション。陽気なようでいて切なさを持ち、1日の終わりの宵が始まるような印象。辺りは暗くなるが、一向に気温が下がらない。そんな時に心身を落ち着けるために、ジョッキのビールを傾けてこの曲に酔いしれたい。

7.E-LOVE – CAUSE I LOVE YOU NO MORE (Alster Lounge Chill Out Vocal Mix)

ドイツ出身Philipp Staudinger、Lars Zimmermannのデュオ。ボーカルはMarkus Höne。ミックス担当がJan Löchel、Kristian Draude、Marius Reinländerの三名がクレジット。この曲はトランスバージョンのミックスが多く、Philipp StaudingerとMarius ReinländerのデュオであるEscanor名義のミックスもある。

波音に、フルートとMarkus Höneの若々しいボーカル。曲調はしっかりとバレアリックなミックスとなっており、ボーカルもしっとりと、しかし生気溢れる響きでその場を包み込んでいる。しかし、フルートのメロディ的にもなんか聞いたことがあるような・・・。

8.SLAVEN KOLAK – PANONIA

シリーズ12から再登場、スペイン出身のSlaven Kolak。

映画の一幕が始まるような、荘厳でありながら緊張感の走る曲。タイトルの『PANONIA』が何を指すのか。綴りが同じであればセルビアのワイン用白葡萄であり、pannoniaであれば古代ローマ帝国属州であった西ハンガリー、東オーストリア、北クロアチア、北西セルビア、北スロベニア、北ボスニア・ヘルツェゴビナの地域辺りを指す。どちらかといえば、後者のほうがより想像を掻き立てられる曲調であるが、どちらにせよどこか異国の歴史や文化の灯火を感じさせる。

9.ROBERTO SOL – SO AWESOME

ドイツ出身のRobert Eisch。画家としても活躍している。

重なり合うスパニッシュギターが力強くも優しく響き、男女のコーラスが讃美歌を思わせながらも決して気張らない親しみやすさがある。海辺のベンチに腰をかけ、乾いた風に吹かれながら穏やかに聴いていたい曲。

10.DAB – PURE JOY

シリーズ10、11、12から連続の登場となるスペイン出身のLuis SanchoとドラマーのPedro AndreuのDigital Analog Band。ボーカルはMiriam Brunet。

緩やかなシンセサイザーが響き、Miriam Brunetの甘くもほろ苦いボーカルが酔わせる。ドラムやキーボードの音がくっきりと奏でられ、キャンバスにポップなカラーで描いていくよう。夕陽の綺麗な日に聴くのはもちろんだろうが、どんな天気の日でも心に晴れ渡る喜びをもたらしてくれる。

11.IVAN TUCAKOV – CINNABAR MIX

セルビア共和国出身のギタリスト、Ivan Tucakov(イヴァン・トゥカコフ)。トルコで幼少期を過ごし、バルカン、インド、キューバやペルシャ音楽に触れてきた。

低音響くギターに、シンセサイザーが乗り、ドラムが乗るとダークなキューバ音楽を思わせる。埃っぽい暗い地下のバーで、招待制のディナーショーが行われている。女性が熱を込めたダンスを披露し、隣で男がギターをかき鳴らす。その演奏と踊りが段々と熱を帯び、観客たちも話すのをやめてしまう。その雰囲気に圧倒され、曲が終わる頃には、観客はIvan Tucakovの魅力からもう逃れられないだろう。

12.TRIANGLE SUN – BEAUTIFUL

ロシア出身のAlexandr KnyazevとVadim Kapustinからなるデュオ。ロシアで行われたラウンジフェスティバル「Café del Mar2004」において最優秀賞を受賞し、イビサ島での夏のフェスティバルにも参加した。

前曲から綺麗に繋がる、ロマンティックな作品。滑らかでスウィートなVadim Kapustinのボーカルが心地よく、非常に強い中毒性を持つ。それを彩るダウンテンポな曲がまた素晴らしい。蒸し暑い夜でも、この曲とカクテルと気の置けない友人がいれば十分だ。

13.GELKA – OS PASTORES DA NOITTE

ハンガリー出身のCsaba KürtiとSándor Dömötörのデュオ。Café del Mar Dreams 3、25周年記念版からの登場。café del marには数曲参加し、のちにはNightmares On Waxの設立レコード会社と契約し主にそちらで活躍している。Gelkaには「夢のような品質」という意味がある。

優しいギターの音色に呼応するように、陽気な声があちこちから聞こえる。曲調は真夏のビーチのような、光り輝く海を思い起こさせるが、タイトルは夜の羊飼い。希望の光を象徴しているのだろうか。もしくは、仕事を終えた後は海岸でゆっくりと贅沢な時間を楽しんでいるのかもしれない。

14.FUTURE LOOP FOUNDATION – MONIKA’S SUMMER

イギリス出身のMark Barrott。シリーズ10からの登場。

シンセサイザーと少し高音のギター、幸福感のあるサウンドがまるで空から響いてくるかのよう。こちらも爽やかな朝の光を一身に受け、祝福されているような気分になる。これまでのチルアウトの名曲の粋であり、酷似しているようでまた非なるもの。Mark Barrottもインタビューにて「イビサの水や風、精神性、その雰囲気に大きな影響を受ける」と言っている。

15.ALEJANDRO DE PINEDO – CAPRICORN

スペイン出身のAlejandro Gil Pinedo。シリーズ12では『Aquarius』を発表している。


カプリコーンは山羊座を指す言葉。暗い深淵を覗き込むように見上げると、サックスの重厚な音色と神聖さを醸し出すコーラスとボーカルが重なり、天体に包み込まれる錯覚を覚える。この曲が流れると、人々は皆夜空を見上げるだろう。

CD2

1.NERA & FELIX – DEL MAR

Nera NohlgemuthとFelix Occhionero。アルバムでは”Nohlgemuth”と表記され、Webでは全て”Wohlgemuth”と表記されている。

Café del Marを愛する曲であり非常にロマンチックだが、ポップでコマーシャルな雰囲気もあり賛否が分かれそうである。スウィートなボーカルに、サックスもわかりやすく印象的。歌詞は切ないが、明るく開放的な曲で、個人的には耳に残ってつい歌いたくなる。

2.LA CAINA – NO TALKING

フランス出身のJean Pierre PlissonとMaxime Plissonの親子。シリーズ12では2曲選出されており、25周年記念版では変名プロジェクトが精力的な活動をしている。

ボサの曲調に、Maxime Plissonの艶かしい歌声がのり、少しのストレスも感じさせない空間を作り出している。ハンモックに揺られながら寝ているように、浮遊感とほんの少しの遊び心が混在し、幸せな心地にしてくれる。

3.IBIZARRE – LAS BRISAS

デンマーク出身のLennart Krarup。café del marでは常連で、Bruno Lepretreと組んだDeep & Wideなどで活躍。自身の活動などが多いためか、意外にもIbizarre名義での参加は初。

実力派であり、イビサでの活動が長いゆえ、シリーズの初期音源に入っていないのが不思議なくらいだ。その音色はどこか古き良き時代を思わせつつも、しっかりと時代に追随した色調を持っている。

4.RUE DU SOLEIL – ANGEL EYES

スイス出身のAlfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio MontuoriとAndia Bischof-Foehr。

Andia Foehrの透明感溢れるボーカルが、こだまするように壁や山を突き抜け、風に乗るように島中を駆け巡る。そのボーカルと対になるようなエレキギターが曲に締まりを与えている。どこまでも響き続け、島全体を抱擁するような温もりがある。

5.SINGAS PROJECT – VOICE

ハンガリー出身のCsernák Zoltán、Szabó Kornélによるプロジェクト。ニュージャズとオールドスクールジャズをブレンドしたコンテンポラリージャズスタイルを持つ。ボーカルはBeata Rostas Piros。サックスはAdy Sinkovics。

B. Rostasの掠れ声のボーカルが牽引し、A. Sinkovicsのジャジーなサックスが響き、夜の雰囲気を彩る。非常にムーディーな曲で、惹きつけてやまない魅力がある。どこかで聞いたことがある歌・・・。

6.MELIBEA – LAMENTO

David HuertasとPedro SánchesとCarlos de los Santos。シリーズ12からの登場。

高山に響き渡るような、やや寂しげなフルートの音色。そこへ打ち鳴らされる手拍子と哀愁漂うギターの旋律が、どこかセピア色の海洋の風景を思わせる。どこまで見渡しても水平線が続くような大洋を駆け巡る切ない曲。

7.YANN KUHLMANN feat. FUEGO – HABLO DEL AMOR

ドイツ出身のYann Kuhlmannは、音楽に携わる傍ら、ヨガ、禅、瞑想の哲学に傾倒し、音楽と心と身体を結びつける活動をしている。ボーカルはFuego(Timur Ucmak)。ギターなどにsuniyata kobayashiの名前があるが、不詳。

Fuegoが愛を情熱的に、切望するように歌い上げる。スペイン語だからこそ伝わる熱を感じられる曲。またギターの旋律が聴く者の心を振い立たせるようで、愛の告白の前にはぜひ聴いて勇気をもらおう。

8.MADS ARP feat. JULIE HARRINGTON – THE MEANING OF LOVE

デンマーク出身のMads Arp。ボーカルにJulie Harrington。Mads ArpはCD1の1曲目のSteen ThøttrupとともにMiroやRemoteとして合作している。

ソロとしてのMads Arpは独特なダウンテンポを持ち、どこか破滅的な雰囲気のある曲である。そこへJulie Harringtonの切ない歌声が乗ることである種の絶望さえ感じる。CD2の1曲目の『Del Mar』との表裏一体のような感情の対比がある。

9.PACO FERNÁNDEZ – FLORES DE LIBERTAD

スペイン出身のフラメンコミュージシャンのPaco Fernandez。

タイトルは『自由の花』であり、ギターの優しさと芯の強さがそれを表しているようにも感じられる。ファニーな調子からジャジーな展開も含み、まるで多種多様に咲き誇る花畑に囲まれた舞台での演奏を聴いているかのよう。

10.JEFF BENNETT’S LOUNGE EXPERIENCE feat. ALEXANDRA – SYMPATHY

ポーランド出身のJEFF BENNETT(本名Michał Mirecki)によるプロジェクト。ボーカルはスウェーデン出身のAlexandra Hamnede。

JEFF BENNETTの織りなす、チルというよりはノリのいいラウンジなサウンドに、Alexandra Hamnedeのクリアなボーカルが乗ると、落ち着きを持たせながら、空間の広がりを感じさせる。曲だけ・ボーカルだけではその情感に引き寄せられてしまうが、二つが合わさることでゆったりとした心持ちにさせてくれる。陰と陽の掛け合いのようだ。

11.LUMINOUS feat. JULIE HARRINGTON – LET YOU IN

イギリス出身のGary Btcherと、8曲目でもボーカルを務めたJulie Harrington。

曲調が変わると、歌い手までもが変化したように感じる。壮大であり、非常に透明感の高い曲。キラキラ輝く海面を見ながら、風が髪や頬を撫でて行く。夕陽を体いっぱいに浴びているようでとても気持ちの良い温度感がある。

12.PEP LLADÓ feat. ANTONIO “EL ÑOÑO” MARTINEZ – VAI VEDERE

スペイン出身のJosep Lladó Arnalはピアニストとしてスタートし、ジャズやカタロニアルンバのスタイルを持ち、彼の作った曲はcafé del marにもいくつかクレジットされている。スパニッシュギタリストのAntonio Martinez。

切なくも力強いギターの音色。フラメンコの雰囲気はそれほど感じないが、胸を締め付ける儚さを帯びたギターの音色であり、情熱の裏腹にある寂寥感や期待感といったものを感じずにはいられない。

13.HEY NEGRITA – ONE MISSISSIPPI (Chris Coco Mix)

イギリス出身のFelix Bechtolsheimer、Matthew Ord、Will Greener、Neil Fin dlay、Paul Sandy、Paul Tkachenkoの6人組ロックグループ。バンド名はローリングストーンズの曲名から取っている。ミックスを担当したのは、イギリス出身でイビサ・チルアウトの重鎮Christopher MellorとHugo Heimann。ボーカルはFelix Bechtolsheimer。

深い響きのイントロが続き、Chris Cocoのダークチルさを感じさせる。が、Felix Bechtolsheimerの優しげな囁きによるボーカルが、小川を思わせる流れに乗せてくれる。ゆったりと漂い、行き着く先もなく大海へと乗り出すような気さえする。

14.VÍCTOR G. DE LA FUENTE feat. ÓSCAR PORTUGUÉS – TU DESPERTAR (Original Chill Mix)

スペイン出身のVíctor González GómezとBasilio de la Fuente Polainaのデュオ。スパニッシュギターをÓscar Portugués Delgadoが担当。

メロウなスパニッシュギターとそれに張り合うエレクトリックギターや微かなノイジーさが、互いに補完し合いながら、心の奥深くに届く共鳴を生み出している。

15.VIGGO feat. GLOW – RIVERS FLOW

スペイン出身のJosé Luis MerinoとJoanna Rubio。ボーカルにGlow。

ダウンな歌声が妙味であるGlowのボイスが、ピアノやスパニッシュギターと絡み合い、どこか民族的な印象を匂わせながらハーモニーを生んでいる。海猫の飛ぶ港をともに羽ばたき、熱気に包まれた街を見ろしているようだ。

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