Café del Mar16(VOLUMEN Dieciséis)

音楽/Music

2010年発売。コンパイラーはRamon Guiral。本来なら2009年にリリース予定だったが、Café del Mar経営陣の対立が原因で、発売が2010年に延期されたという経緯を持つ。詳細は不明だが、巨大ブランドゆえなのだろうと想像できる。ここ最近の通りの2CD仕様。バラエティ豊かな楽曲が多くなり、チルアウトの解釈にもまた変化があるように思える。

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CD1

1.Cécile Bredie – The Autumn Leaves / Les Feuilles Mortes

オランダ出身、Cécile Bredie。大学で法律学を修め、レコード会社で弁護士に。世界を探検したいという思いから、歌手となり、現在は作詞作曲もする。こちらはYves Montandの『Les Feuilles Mortes』のカバー、リメイク。

美しいクラシックなピアノオープニング。そこへバレアリックムードなメロディに、艶やかで洗練されたボーカルが、枯葉に彩りを加えている。原曲はYves Montandの渋いボーカルが魅力的。

2.Noise Boyz feat. Io Vita – Declaration Of Love

ドイツ出身、Peter Fischer。The Man Behind Cとしても活動。ボーカルは Io Vita(Jowita Wieland)。

1曲目に続き、ピアノがクラシカルに響き、 Io Vitaの情感豊かな歌声により魂が込められている。切ないような幸福感に満ちたような・・・まるで高い天井へ吸い込まれていく感覚を覚える。

3.Roberto Sol & Florito feat. Martine – Won’t Give Up

ドイツ出身、Robert Eisch(シリーズ13で登場)とFlorian Lüttich。ボーカルはMartine-Nicole Rojina。

チャイムのような音色が響くと、ポップカラーで満たされた天国への扉を開いたような展開。ソウルフルなボーカルが、ハウスを基調にダウンテンポやアンビエントと融合され、より色濃く世界を描き出している。

4.Ivan Tucakov & Tambura Rasa – Gypsy Love Mix

セルビア出身、Ivan Tucakov(シリーズ13で登場)。Tambura Rasaは彼が作った、セルビアやスペイン、トルコ、中東などのパフォーマーたちの集団。

掻き鳴らされる、叙情に満ちたギターの旋律。そしてそのメロディに掛け合わされていくバンドミュージック。スペインの真夏の砂浜を支配する歌声。・・・なぜか、ビールが飲みたくなる。

5.Andreas Agiannitopoulos – Cause I’m Not Sorry…

ギリシャ出身、Andreas Agiannitopoulos。

ダウンテンポとハウスの要素を感じさせるメロディに、特徴的なギターやビートがドラマティックに聴かせる。

6.Clélia Felix – Dancing With The Sun

フランス出身のClélia Felix。シリーズ14、15と本作で立て続けの出演。

真夏の夜を彩るようなムードのある曲。芯のある気丈な女性の内にある繊細な響きを表現するようなギターの旋律が印象的。静かに燃えるような、青い炎を宿したスパニッシュの情熱と、その裏にある哀愁が混在となっている。

7.Ingo Herrmann – Rain Of Love

西ドイツ出身、シリーズ15にも登場したSoulchillazのIngo Herrmannのソロ。

チル・・・か? と思わせるボーカル曲。下地となる曲はアンビエントなイントロから、やがてビートの効いたアップテンポになっていく。再び乗ってくるボーカルがより強く訴えかけ、落ち着く雰囲気ではない。ボーカルとメロディの乖離が妙味を作り出し、ノリよく静かに楽しませるココントラストが印象的。

8.Bas – Aethalia

イタリア出身、Stefano Baldettiによるプロジェクト。サックスはClaudio & Fabiani。

サックスが叙情的に響き、穏やかなピアノとのセッションを奏でる。ジャズのライトな響きが空間を希望や幸福感で満たしていく。ひと泳ぎした後に、デッキチェアに揺られながら曲に包まれたい気にさせてくれる。

9.Aware – En Busca Del Sol

M.Lane & T.Morrison。Café del Marの20周年記念ライブのオープニングを務める。某サイトの2012年のレビューでは「そのジャンルの大物やイビサの音楽シーンの住人の多くに知られているにもかかわらず、相変わらず謎めいた方法で活動を続けていますが、悲しいことに、彼らは相変わらず無名のまま」と評されている笑。

イントロから良曲であることが約束されている。透き通るようなピアノやトランペットと思しきその音色が、キラキラと瞬きながら夜空を彩るかのよう。ダウンで静かに、だがしっかりと鼓動を刺激するメロディに酔いしれる。

10.Yuliet Topaz – A Miracle

ドイツ出身、シリーズ15にも登場したYuliet TopazとTape Five名義でも活躍するMartin Strathausen。

エスニックな雰囲気を醸す作品。夕陽色の波打ち際に座って、しっとりと聴き入りたい誘惑に駆られる。夕方の何とも言い難いアンニュイな雰囲気に包まれ、まだまだ終わりの来ない夏を堪能しているよう。

11.Sol Eléctrico – Come With Me

ドイツ出身のGeorg GrisloffとAnika barkowski。シリーズ15に続いてのクレジット。   Anika barkowskiがボーカルを担当している。

インクルーシブな閉じられた空間でのライブのよう。アダルトな雰囲気を醸すサックスがダークな雰囲気を纏い、アンニュイなボーカルのほろ苦さが、ブランデーで割ったカフェを飲んでいるような気になる。

12.Romu Agulló – Sueños

スペイン出身、Romu Agullo Llorens。高等音楽院でギターを専攻。

柔らかなシンセに、優しいピアノの旋律が響く。青い空、白い建物の街並みを見下ろす屋上に吊るしたハンモックに揺られながら、夢現のひと時を過ごすかのよう。美しく彩られた時間、空間を贅沢に味わう作品。

13.Thomas Lemmer – Fatigué

ドイツ出身のThomas Lemmer。クラシック音楽の教育やピアノのレッスンを受け、教会のオルガンの研究などにも携わった。

オルガンやギターが深淵を思わせる、没入感のあるサウンドスケープ。海底に差し込むわずかな光に照らされた空気の泡が、スローモーションとなって浮かんでいくような景色を思わせる。

14.Mark Watson – Long Flight Home

オーストラリア出身、ピアニスト・シンセサイザー奏者のMark Watson 。大学ではジャズも学んでいる。

哀愁あるオルガンの音色が寂寥感を刺激し、しっかりとサンセットを意識するサックスと、弦楽器によよって情感を盛り上げられるジャジーな展開。旅路の果てに広がる景色を想像させる情感がある。

15.Future Proof – Sea Bird

イギリス出身のNick Meynell。アンビエント、アシッドトランス、ハウスなどをスタイルとする。

どこかの旧跡のそばのビーチを思わせる、クラシックな作りを感じさせる曲調。女性のボイスが伸びやかに響き、サックスの叙情が夏の夕方の気だるさを思わせる。

16.Elmara – Sky In Your Eyes

スペイン出身、Fernando Marañon Sánchez。前作15では4曲がクレジットされるという活躍ぶり。

今回もやはり、その音の光景は黄金に輝いている。電子音とピアノの美しい融合。特徴的な曲調が、ありありと彼の心象風景を映し出し、聴く者を彼の心の内側へと誘う。

CD2

1.Gary B – Stronger Love

イギリス出身のGary Frederick Butcher。ボーカルはEllie Fraser。

穏やかなイントロから、何か予感を抱かせるビートとボーカルが緩やかに流れ出す。突出したインパクトがないため聴きやすく、アルバム全体のイントロダクションを感じさせる。

2.Koru – Hear Me

イギリス出身、John McGoughとMatt Wanstall。ボーカルはLiz Sykes。

お得意のサックスと、クセのあるメランコリックな旋律が特徴的なジャジーな曲。上質なナイトジャズを感じさせる作りは期待を裏切らず、都会の夜に相応しいしっとりとしたムードを醸している。

3.DAB – You And Me

スペイン出身、Luis Sancho HijarとPedro Andreu。ギターはNacho Estévez “El Niño”。

強めのボーカルが曲を牽引し、El Niñoのギターが絶妙にチルアウトさせる要素を持つ。男性のボーカルが、まるでサンセットを礼賛するような情熱を込めて歌い上げている。

4.Valentin Huedo & Atfunk – Until The Sun Goes Down

ともにイビサ出身のValentin HuedoとAtfunk(Santi Tur)によるプロジェクト。Valentin HuedoはCafé del Marの最年少DJ・レジデントとして10年もの間サンセットBGMを担当した。Atfunkもまた、イビサを地元として数多くスペースでプレイしている。のボーカルはNela EscribanoとValentin Huedo。

クラシカルな雰囲気を纏い、アンニュイなボーカル、ハープやギターの哀愁が響くダウンテンポな作品。陽が沈むまでの1分1秒を丁寧に織りなす、深い情緒を感じさせる。

5.Lenny Ibizarre – El Viejo Pescador

デンマーク出身、Lennart Krarup。

静寂と哀愁を併せ持ったピアノ曲。Ibizarreが持つ独特なバレアリックは鳴りを潜めている。タイトルは年老いた漁師、イメージ的にサンチアゴだろうか。煌めき、ゆらめく水面を進む小舟。だが悲壮感はなく、あるのはやすらぎ。

6.Alexander Vögele feat. Jillence Luce – Inner Music

Alexander VögeleとJillene Luce、Minus8のRobert Jan Meyer。

Jillene Luceのボーカルが海岸線をどこまでも響いていくような印象。開放感と幸福感に満ちた曲調が、ピアノのエッセンスと溶け合い、心地よい海辺の時間ごと包み込んでくる。

7.Alejandro de Pinedo – Hotel Utopia

スペイン出身のAlejandro Gil Pinedo。サックステノールとフルートをLucas Morenoが担当。ボーカルはRamón Tanaco。Alejandro de Pinedoはシリーズ12から欠かさず出演している。

波の音をイントロに、すぐに持ち前のエロティックなサックスが響く。スパニッシュらしい、情熱と哀愁を含んだメロディ。フルートもその可愛らしい音色とは裏腹に、叫びを思わせる旋律を奏で、最高潮時にはキューバミュージックを思わせるエネルギッシュな展開を見せてくれる。

8.Ludvig & Stelar – How Does It Feel?

クロアチア出身、Damir LudvigとGoran Stetic。ドイツのラブパレードなどでも演奏し、国際的な評価を得ている。シリーズでは11、15にもクレジット。

おしゃれなフレンチミュージックを感じさせるような曲。歌詞は切ない系だが、その歌声とハウスのメロディがダンサブルな一曲。真昼の青い空に合いそうな曲。

9.Villablue feat. Slide – On My Mind

フランス出身のPascal De Falcoとカナダ出身のシンガー、Juanita Grandeによるユニット。

Juanita Grandeの少し乾いたようなボーカルに、Pascal De FalcoとSlideの落ち着いた男性ボーカルが対比され、そこへギターがスパイスを効かせている。汗が滲む体を揺らしながら聴くのが合いそう。

10.Schwarz & Funk – Savannah Sunset

ドイツ出身、Alexander Hitzler(Bob Schwarz)とMartin Czihal(Jesse Funk)、Joe T. Aykut。
シリーズ15にもクレジット。

夕陽を映すような穏やかなイントロに、うっすらと響くパーカッションがサバンナの風を思わせる。遥か遠くに聳える神秘的な山々が、オレンジ色の光を浴びてまるで燃え上がるような様子が目に浮かぶよう。

11.Steen Thøttrup – If You Were Here Tonight

デンマーク出身、Steen Thøttrup。ボーカルはAnnette Berg。

いつものやや北欧の冷ややかさえ感じる曲調に、Steen Thøttrupの低温のようなボーカルがメインに響き渡り、Annette Bergのボーカルは控えめにコーラス的な役割を果たしている。ダークな雰囲気を持ち、Steen Thøttrupの曲は北欧の薄暗い森へと誘う傾向がある。

12.Soulchillaz – Promised Land

ドイツ出身、Ingo Herrmann。

CD1では本人名義。こちらは、しっかりとチルへ寄った作品。ピアノメインで多幸感のある曲調。ボーカルはいい意味で耳に残らず曲を支える働きであり、ピアノやサックス、ギターが夕焼けのテラスを思わせる。どこか昔懐かしい気持ちにさせてくれる。

13.Rue du Soleil – Atlantis

スイス出身、Alfonso Bianco, Dragan Jakovljevic, Yavuz Uslu, Claudio Montuori。

濃い青色をした海の上空にかかっていた雷雲が晴れ渡り、一気に陽が差し込む劇的な変化を、サウンドが表現している。まだ見ぬ地へと勇み、日に焼けた肌が光り輝くような一曲。

14.Jesús Mondéjar – Acoustic Feeling

フラメンコチルをスタイルとするJesús Mondéjar 。

ギターとピアノが印象的な、クラシカルなフラメンコチル。民族感をたっぷりと感じることができる。優雅さの中に、どこか哀愁を感じるメロディ。

15.Paul Hardcastle – Don’t You Know

イギリス出身、Paul Louis Hardcastle。シンセポップ、ブレイクステップ、スムースジャズをスタイルとし、イビサを意識した自身の曲のチルアウトリミックスを制作している。

ディープなスムースジャズ、ダウンチル。夜景が似合いそうな、しっとりと落ち着きながらどこかスモーキーな世界を感じさせる。

16.Toni Simonen – Terrace

フィンランド出身のToni Simonen。

クラシカルな曲調のピアノが美しい、まさにCafé del Marを象徴するチルアウト曲。陽が沈むその瞬間を切り取った一曲が静かな感度を与えてくる。紆余曲折のあったアルバムだが、夕陽と海と音楽があるそこに変わりはないのだと思わせる。

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