2012年発表。コンパイラーはToni Simonen。過去のアルバムからの選出で、3CD仕様にまとめ上げている。さすがに選び抜かれた曲だけあり、当然ながら秀逸な作品ばかり。Café del Marの中で1枚聴いてみるというのなら、このアルバムがいいかもしれない。ただし、ある意味では完成しすぎている。2枚目以降には、ナンバリングや記念版では初収録となるものもある。
*過去収録曲はほぼ同じコメントとなります。
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CD1
1.D*Note – D*Votion
VOLUMEN DOS(2)より。
イギリス出身のMatt Winn (Matt Wienevski)らによるエレクトロバンド。フランス・イギリスのクラシックやモード・ジャズの影響を受けている。
典型的なバレアリックサウンドを感じさせる曲調だが、内包されるハウスやアンビエントが見事に融合している。徐々に盛り上がる多幸感が非常に心地よい。シンセサイザーの旋律がエスニックなフルートと調和し、眼前に広がる海を感じさせてくれる。
2.Chicane – Offshore (Ambient Mix)
VOLUMEN CUATRO(4)より。
イギリス出身のNicholas Bracegirdle。Leo ElstobとのDisco Citizenzでも活躍している。Chicane名義の曲は多く、精力的な活動を続けている。相方のLeo ElstobもLeo Zeroの活動が特に有名。
遥かな大洋と眩い日差しを感じさせる名曲。Chicaneはプログレッシブトランスも制作しているが、そのサウンドには常に一貫性があり、ハウスでもダウンビートでも、ロック感が強い時でもしっかりとChicaneらしい上質なトリップを感じさせる。Chicaneの曲の中でも群を抜いたバレアリックサウンドが、心地よく心身を包み、解放してくれるのを感じさせる。
3.Salt Tank – Sargasso Sea
VOLUMEN DOS(2)より。
イギリス出身のDavid GatesとMalcolm Stannersによるデュオ。パーカッショニスト兼ボーカリストだったAndy Roseも参加していたが、2012年11月に癌の闘病の末に逝去している。
主にテクノ・トランスなどを制作しているが、シリーズには本曲やAngels Landing(José Padilla mix)といった曲がクレジットされているほど、アンビエント・ハウスにも定評がある。サルガッソ海は北大西洋の西部に位置する海で、透明度が非常に高く、海面に浮いている舟がまるで宙に浮いているように見えるほどで有名。そんなサルガッソ海に漂うような感覚を呼び起こすハーモニーと、ウミネコの鳴き声や波の音が聴く者をを包み込む。
4.Afterlife – Dub In Ya Mind
VOLUMEN SEIS(6)より。
イギリス出身のSteven Millerによるプロジェクト。シリーズ3、4に引き続き常連となっている。ボーカルはRachel Lloyd。
バレアリックな曲調がイビサにぴったりと寄り添う曲。雷鳴のような音から始まり、その後に広がる澄んだ青空に穏やかなラテン系のエッセンスが緩やかに混ざり合い、ビーチで過ごす何気ないひとときをより一層美しいものにしてくれる。
5.Levitation – More Than Ever People
VOLUMEN CINCO(5)より。
ドイツ出身のIngmar Hänsch、Marcell Meyer、Chris GilcherによるLevitation。ボーカルはCathy Battistessa。この曲はJosé Padillaによりほぼ毎晩日没時に流され、大人気となった。
水中の気泡を感じながら、これは浮かんでいるのか沈んでいるのか。低音の効いたギターが旋律を奏で、Cathy Battistessaのクリアーなボーカルが情熱的に歌い上げる。心地よいサウンドの波が押しては引き、臨場感を掻き立てる。決してポップでなく、耳に残らない曲だからこそ、儚いサンセットと完璧に調和するのだろう。
6.Voices of Kwahn – Return Journey
VOLUMEN CUATRO(4)より。
アメリカ出身のAnna Homlerと、Nigel Roger Butler、Mark Stephen Daviesのデュオ。(と思われる)
Anna Homlerのエスニックさを感じさせる沈んだボーカルに、低く響くフルート、パーカッションの融合が呪術的な印象を醸し出している。しかしそれがイビサのイメージを壊す訳ではなく、しっかりとイビサの持つ神秘的で歴史ある側面を形成している。
7.Pressure Drop – Dusk
VOLUMEN TRES(3)より。
イギリス出身のJustin LanglandsとDave Henleyのデュオ。プロデューサーは彼らの別名義であるBlood Brothers。N.O.W.と同じくトリップホップ、またダウンテンポをスタイルとする。
ダークでスモーキーな雰囲気が漂い、フルートやパーカッション、独特な歌声が前曲同様、どこか呪術的なエスニック感を演出している。薄明かりを意味するタイトルの『Dusk』が、夜へと移ろいゆく様を表した曲調となっている。
8.dZihan & Kamien – Homebase
VOLUMEN SEIS(6)より。
オーストリアを拠点とし、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のVlado Dzihanとドイツ出身のMario Kamienの2人によるもの。ジャズ、ラテン、エレクトロニカ要素を融合させたサウンドが特徴。
数多あるチルアウトの中でも、極めて洗練された美しい旋律を奏でている。ピアノをメインにジャジーでスモーキー、ドラマチックに展開する曲が聴く者に深い感動を与えるだろう。他アーティストによる多くのリミックスがあるが、やはりこのオリジナル版が持つ叙情性と深みは他に代えがたいものがある。
9.Endorphin – Satie 1
VOLUMEN SEIS(6)より。
フランス生まれのEric Chaps。放送局主催のコンテストで優勝し、頭角を表す。ライブや映画・テレビなどのサウンドクリエーターとして活躍。また、チルエレクトロニカの巨匠で、美しいピアノ曲が印象的な「Ambient Chill」シリーズを出している。
アップビートでエレクトロニックなクラシックになっている。落ち込みすぎない編曲で、ビーチで聴くならちょうど良さそう。しかし、西洋人のサティに対するリスペクトの大きさには驚かされる。
10.Bent – Swollen
VOLUMEN SIETE(7)より。
イギリス・ノッティンガムの2人組ユニット、Neil TollidayとSimon Mills。サンプリングスタイルを得意とする。この「Swollen」は俳優Michael Caineが「最もロマンチックなチルアウトソング」として評価している。また、ボーカルはグラミー賞にもノミネートされたZoë Johnstonであり、Bentの同郷でもある。
浮かび上がってきたところでまた沈ませるかのような、アンニュイな曲。Zoë Johnstonのクリスタルボイスとスモーキーなサウンドが、その独特なロマンチックさを織りなしている。
11.Bedrock – Beautiful Strange
VOLUMEN SIETE(7)より。
イギリスのエレクトロニックダンスミュージックデュオ、John DigweedとNick Muirの2人組。John Digweedは2001年に世界No.1DJにも選ばれている。シリーズ6ではHumateの『3.2』をミックスしている。
アンビエントミックスとはいえ、ほぼプログレッシブハウスやエレクトロミュージックのままのエントリー。だが深淵な雰囲気を湛えた曲調が夜空を思わせ、重たいドラムの拍動が闇に溶け込むのに合わせるように、星が瞬くのを感じさせられる。
12.Nova Nova – Tones
VOLUMEN TRES(3)より。
フランス出身のMarc DurifとMichel Gravilのデュオ。
クラシカルなピアノの力強い旋律が、無形である風や光の表現しているかのよう。また、闇の中のスポットライトを浴びて踊るダンサーの、滑らかでいて強靭な肉体をも思わせる。浮かれた文化への嘲笑を一蹴し、複雑に編まれた歴史や文化への畏敬の念を著した作品となっている。
13.Unkle – Trouble In Paradise
VOLUMEN DIECIOCHO(18)より。
イギリス出身、James Lavelle、Pablo Clements 、Aidan LavelleとPhilip Sheppard。初期のUNKLEにはDJ Shadowや、日本のヒップホップクルーMajor Force の工藤昌之と中西俊夫などが参加している。
シネマティックなイントロから、ドラマティックな盛り上がりを見せる。クラシックのような緊張感も持ち合わせ、まるでイビサのビーチで野外上映される宇宙映画のような印象。序幕の終わりといったような雰囲気。
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