1999年に発売された、日本向けのバレアリックチルアウトコンピレーション。監修はDJ 19(ナインティーン)の田中裕之。Café del Marのナンバリングシリーズやその姉妹版と扱われるReal Ibizaなどに登場している曲が多く、CDのライナーノーツからもDJ 19が当時のIbizaに精通している様子がありありと伝わる。’99年はJosé Padilla最後のコンパイル、Café del Mar Vol.6が発表された年。
*某販売サイトではJosé Padillaが選曲・監修と書かれているが、CD付属のライナーノーツなどにより、実際は関わってはいないのがわかる。
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1.Nightmares On Wax – Nights Interlude
Café del Mar Vol.3に収録。
イギリス出身のGeorge Herbert Evelynと、当時メンバーのKevin Harperのプロジェクト。トリップホップを主体とし、レゲエやヒップホップなどのバックボーンを持つ。原曲はQuincy Jonesの『Summer In The City』。この『Nights Interlude』は’91年発表であり、96年に発表された『Le Nuits』は、さらにストリングスやジャズ要素を付加し、より深い没入感のある進化を果たしている。
上質なスモーキーサウンドを体現している代表曲。その芳しく薫製されたウイスキーの飲み口に酔いしれる。
2.Language Lab – Burning Disaster (Groove Armada Bedtime Story Mix)
Café del Mar 40th Anniversaryに収録。
イギリス出身、Robin Morleyによるプロジェクト。90年代にヒップホップグループSubsonic twoとして活動し、解散後トリップホップに影響されてLanguage Labとしての活動を開始した。
原曲は性格の全く違うアップテンポなヒップホップサウンド。これをGroove Armadaがどういう解釈をしたのか、非常にメロウでゆったりとした旋律を駆使し、夏の温度やその海の潮風、波間の泡立ちを感じられる曲へと仕立てている。
3.Coco Steel & Lovebomb – The Sunset (A Reminiscent Drive Mix)
Café del Mar 35thに収録。
イギリス出身のChris MellorとLene Stokes、Craig Woodrow(Lovebomb)によるプロジェクト。ミックスはフランス出身のJay AlanskiによるA Reminiscent Drive。
バレアリック代表とも言うべき、Chris Cocoらによるチルアウト。どこかトライバルな印象の打楽器やボイス、時折響く大きな波が打ち寄せるような環境音がアクセントに響く。沈みゆく夕陽に想いを馳せながら、大いなる文化の風に髪をたなびかせて立ち竦むような気にさせられる。
4.Ibizarre – Smooth Temptation
デンマーク出身のLennart Krarup。’97年に自身のレコードレーベル「Ibizarre Records」を設立。後年の2013年にはPacific Electronic Musicというレコードレーベルを設立し、レーベルの最初のコラボ相手は本アルバム13曲目の元ネタに当たるSister SledgeのメンバーKathy Sledgeである。
ロマンチックなバレアリック曲であり、今では往年の名曲であろう。時代を感じさせる部分はあるが、それこそがかつてのIbizaを表現する空気感そのものに思える。音像の向こうに、その時代を反映しているファッションをしたカップルが、砂浜で海を前に囁き合う。見た目は変われど普遍的なそれこそが、連綿と続く人生の豊潤なひとときだろう。
5.A Man Called Adam / Estelle
Café del Mar Vol.1に収録。
イギリス出身のSally RodgersとSteve Jonesによるユニット。アシッドジャズ、バレアリックハウス、チルアウト、ニューブリティッシュハウスのサウンドを主体としている。
チルアウトの源流はディープハウスである、を体現する名曲。バレアリックの持つ雰囲気や、エスニックさという彩りの鮮やかなドレスをまとったイメージ。華やかで楽しい、幸福感のある曲。
6.José Padilla / Close To You
スペイン出身、José Padilla。言わずと知れた伝説的DJ。原曲はBurt Bacharach & Hal Davidの『(They Long To Be) Close To You』のカバー、というより再解釈と言われる。José Padilla自身のアルバム「Souvenir」に収録。
スパニッシュギターがスイッチとなる、Ibizaの空気や情景を映し出す完全な装置。そのギターの音色は哀愁や陽気さ、喜び、愛に溢れている。チルアウトというジャンルに壁や国境はないが、あくまでも主体はここにあるということを感じさせる。誰しもが聴いた原曲でありカバー曲だが、この曲は”当時のあの場所”を強く想わせる。
7.Indo-Aminata – Leo Leo
Café del Mar Vol.4に収録。
西アフリカ出身のAminatà Fofanaと共同プロデューサーにSouled Out、Leonardo Rosi。Aminatà Fofanaはモデル・歌手としてヨーロッパで活躍し、病を患い故郷へ戻り、アフリカン・ニン瞑想法を実践している。
出だしから色気たっぷりのサックスと、Aminata Fofanaの魅惑的なボーカルが感情を揺さぶる。また、スパニッシュとアフリカンが融合したサウンドに祈りを込めたコーラスが神秘的な雰囲気を漂わせ、聴いている者の心の中に熱い感情を呼び起こすことは間違いないだろう。
8.Karen Ramirez – Troubled Girl (Bossadub)
Café del Mar Vol.4に収録。
イギリスのダンスミュージック歌手Karen Ramirez。7曲目のIndo-Aminataに関わったSouled Outがプロデュースしている。
この曲には英語バージョンも存在し、言語の違いによっても印象が大きく異なる。スペイン語バージョンでの彼女のソウルフルな歌声と、スパニッシュギターの音色が強いアクセントとなっている。民族的で情熱的なサウンドは、7曲目のIndo-Aminataと同様の雰囲気を醸し出しており、アルバムの統一感を引き立てている。
9.Vanessa Daou – Sunday Afternoons
アメリカ出身の歌手、ダンサーでもあるVanessa Dale Daou。ニュージャズ、トリップホップ、エレクトロニック界でのシンボル。3つの大学でダンスや詩、芸術を学び優秀な成績で卒業している。メジャー最初期は5人編成のバンドと活動していた。後にソロ活動を始め、Erica Jongの詩・作品にインスパイアされた本曲収録の『Zipless』ではそのポエトリーな表現と文学性の高さが国際的に好評を得た。
7曲目からこの9曲目までは、3人の歌姫による豪華な舞台を見た気分にさせてくれる。それぞれの性質の違いが見応えのある一幕として存在している。
10.Electribe 101 / Talking With Myself’98(Canny Remix)
Café del Mar Vol.5に収録。
イギリス出身のBillie Ray Martin (ボーカル)、Joe Stevens、Les Fleming、Roberto Cimarosti、Brian Nordhoff、L.Schifrinによるグループ。1988年から1992年まで、ブルージーでソウルフル・ハウスな演奏で活躍した。この『Talking With Myself 』が最大のヒット曲となり、Cannyのリミックスバージョンはバレアリック・クラシックとなった。リミックスを担当したCannyはイギリス出身のLaurence Nelson、 Alastair JohsonとNick Carterのトリオ。Nick Carterはシリーズ3でEighth Waveとして参加している。
オリジナルも勿論良いのだが、このCanny Remixが非常に複雑な音の構成で、奏でられる音色は細い絹のように繊細、それに相まったボーカルの持つエネルギーが聴く者の心臓へと肉薄してくる。ピアノをリードに、幾層もの音が重なり合うことで、曲全体に重厚感を与え、非常に美麗で深みのある仕上がりになっている。
11.Chicane / Offshore(Original Ambient Version)
Café del Mar Vol.4に収録。
イギリス出身のNicholas Bracegirdle。Leo ElstobとのDisco Citizenzでも活躍している。
遥かな大洋と眩い日差しを感じさせる名曲。複数のUKチャートにも選出され、Café del Marの世界にも堂々と迎えられるべき一曲。Chicane自体の主軸はプログレッシブトランスといったところだが、上質な曲をなぜこうも量産できるのか。またこの『offshore』は、本人や他のDJたちによりあまりにも多くリミックスされているが、このAmbient mix以外ならA Man Called Adamによるリミックスも必聴だろう。
12.Miro – Emotions Of Paradise
Café del Mar Vol.3に収録。
デンマーク出身のMads ArpとSteen Thøttrupのユニット。テクノ、トランス、ハウスなどを手掛け、チルアウトでも欠かせない存在。のちのレジデントDJであるBruno Lepetreに「史上5番目に優れたアンビエントトラック」と評価されている。
明るさを感じない、ダークな感情を持つ楽園・・・。プログレッシブさを持つ曲調。初期Café del Marではこういったプログレッシブな曲が多く、それも時代を写すコンパイルであり、チルアウトの源流がディープハウスであることを思うとまた感慨深い。
13.Maureen Walsh – Thinking Of You(Dream Mix)
イギリスを拠点とするMaureen Walsh。原曲は1984年にSister Sledgeが発表したディスコナンバー。
遠くから響いてくるサックスの音色。ゆったりとしたドラミングとともに、その夕景が脳裏に広がる。ピアノの旋律が心を哀愁へと絡めてくるが、時折入るコーラスも含め、全く暗い気持ちにはさせない。タイトルも相まってか、愛情を感じる作品。音楽への愛、景色への愛、人への愛、時間への愛・・・。トリップ系ではなく、地に足のついた感動を覚える。
14.BBG / Snappiness(Evolution Mix)
アメリカ出身、ボーカルのDina Taylor(Dina Richardson)、Ben Angwin、Phil Hope(Philip Michael Francis Hope)、T.Newland、N.Hooper、B.Romeoらによるプロジェクト。
正式名称はthe Big Boss Groove(と思われる)。1990年イギリスからリリースされたバレアリックハウスの名曲。SOUL II SOULの『HAPPINESS』のピアノリフを使用し、スモーキーなトリップを纏ったミックス版。他にインスト版、ボーカル版とあり、それぞれが非常に美しい曲となっている。
⚫︎最後に
付属のライナーノーツにDJ 19による「『Ibiza Balearic Moods』の正しい聴き方」と「日本でイビサを味わう方法」が記されているので、一部抜粋。
「ここに収録されている曲は、いわゆるCAFE DEL MARクラシックと呼ばれているものばかりだ。聴く時間と場所を限定しないCDである。・・・日本でイビサを味わうために、この『Ibiza Balearic Moods』とラジカセを持って海へ出かけよう。ただ一番の理想は新島をイビサにしてしまうことである」

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